研究課題
本研究の目的は、圧電性(電気的エネルギーと機械的エネルギーの変換機能)を示す強誘電体について、これまで薄膜や微粒子等のナノスケール構造で分極を減少させると考えられてきた反電場を積極的に利用して、新奇な圧電メカニズムを創成するものである。最終年度となる平成29年度は、主に、これまでに見出した分極軸が傾斜した正方晶(111)ナノロッドが示す特異な圧電特性の詳細を明らかにするために、実験・理論研究をさらに進めた。代表的な成果として、サイズの異なる(111)ナノロッドを作製し、それらの電界誘起格子歪みを放射光XRDおよび圧電応答顕微鏡で評価した結果、サイズの減少とともに歪みが増大することが明らかとなった。さらに、この増大した電界誘起格子歪みは、電界除去時にただちに元に戻る早い応答成分と、時間をかけて戻る遅い応答成分から成っており、後者は分極傾斜ナノロッドに特有の現象であることが分かった。この遅い応答は、試料を極性溶媒に浸すと早くなることから、分極傾斜ナノロッドで増大した電界誘起格子歪みは、ナノロッド側面での不完全な電荷補償がもたらす反電場と強く関係していることが実験的に示された。これまでに得られた成果を総括すると、分極傾斜ナノロッドでは、側面に垂直な反電場によって相が不安定化し、電界印加によって分極方位がロッド長手方向に沿った相に容易に変化(相転移)することで、大きな圧電応答が実現した可能性が高いと考えられる。このように、強誘電体ナノスケール構造では、反電場を利用して相を不安定化させることで、これまでにない新しい圧電メカニズムが創成可能であることが示された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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J. Ceram. Soc. Jpn.
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Sci. Rep.
巻: 7 ページ: 5236
10.1038/s41598-017-05475-x