当研究期間においては、前年度に引き続き、発光中心を含有する酸化物ガラスを溶融急冷法により作製し、多様な解析手法を用いて構造、および、発光特性の評価を実施した。本年度は、酸化物ガラス中にドープする発光中心として、ns2型発光中心の代表的なカチオンであるSn2+に加えて、同様に配位子場の影響を受けるCe3+を発光中心として選択して、それらの類似性および相違を議論した。前者はs-p遷移、後者はf-d遷移であり、共に、大気溶融によって発光不活性である高酸化数に変化するため、Ar中での溶融を実施した。また、大気中での溶融中における酸化反応を避けるため、1100℃以下で溶融可能なガラス系を選択して研究を実施した。本研究においては、特に、ガラス中における発光中心の価数に注目し、大型放射光施設SPring-8にてX線吸収微細構造(XAFS)測定を行うことによりその価数を評価し、物性との相関を議論した。本年度は、Snの価数評価に際して、L2端を用いたXAFSが、より実際の価数を反映することをSn メスバウアーの結果と比較することにより明らかにした。また、紫外光を照射して得られる蛍光以外に、X線を照射して得られるシンチレーションや遅延発光についても調査を行い、ガラスにおけるシンチレーション特性が、X線を吸収したホスト材料から発光中心に至るエネルギー輸送過程に大きく依存することを見出した。一方で、ホストガラスのネットワーク構造に注目し、多様な測定手法を基に精密なガラスの3次元モデリングを行うことに成功した。これらの成果は、将来的に、より高効率な発光特性を有するガラスベースの材料を設計するために必要な知見であると考えられる。
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