微小腫瘍を細胞レベルで非侵襲に光検出し,完全に治療する技術開発が急務である.本研究では,がん細胞を非侵襲・高感度に検出して死滅させる目的で,生体に類似な穏和な条件で高次構造形成と表面・界面制御の融和によって生体親和性と発光特性に優れたメソ多孔質水酸アパタイト (HAp) 粒子を創製した.平成28年度には,抗がん剤をメソ細孔内へ担持し,メソ細孔口を感光性物質により複合封止化し,光によってメソ細孔口を開放して抗がん剤を放出する技術を開発した. 前年度までに合成したメソ構造体粒子へ葉酸誘導体分子を化学修飾固定した.更に,葉酸誘導体分子間の会合を抑制するために,スペーサー分子導入技術を確立した.本粒子は,蛍光顕微鏡によって,2種類のがん細胞 (ヒト骨肉腫MG-63細胞,ヒト子宮頸がんHela細胞) へ選択的に取込された.次いで,メソ細孔内へ抗がん剤を担持し,がん細胞内での光誘起反応について考察した.具体的に,メソ細孔内へ抗がん剤を担持し,感光性物質によって複合封止化した.ここで,感光性物質とは,感光性分子を化学修飾した金ナノ粒子である.その結果,光照射に伴って,感光性分子が分子内開裂して電荷が変化し,感光性物質がナノ粒子から脱離した.この変化に伴って,抗がん剤の放出が観測された.つまり,光照射によりメソ細孔口が開放され,抗がん剤が放出された.がん細胞内においても,光照射に伴って,脱離に伴う光学的特性が変化し,細胞生存率が減少した. 以上により,生体親和性と発光特性に優れたメソ細孔構造を創製し,構造の骨格と表面の機能を協奏させ,がんの革新的非侵襲診断・治療技術の基盤を創出した.本成果は,特許出願し,研究会を設置して議論し,イギリス化学会誌などへ論文掲載された.今後,本研究を更に進化・深化させ,ナノバイオ分野を飛躍する材料基盤を創成し,日本国の超少子高齢社会をより良く豊かにする.
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