研究課題/領域番号 |
26709053
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
多根 正和 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (80379099)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 弾性率 / 粗視化理論 / 単結晶 / 結晶配向性 / 集合組織 |
研究実績の概要 |
強い弾性異方性を有する立方晶系の単結晶に対して、単結晶育成を必要とせずに単結晶弾性率を決定する方法に対する理論構築を行った。具体的には、結晶配向性を有する多結晶体の巨視的な弾性率および多結晶体内の結晶配向性および結晶粒形状の情報から、Eshelbyの等価介在物理論および有効媒体近似を用いて単結晶弾性率を決定するための手法 (inverse self-consistent 近似)を構築した。構築した手法の有効性を検証するため、鋳型鋳造法を用いた一方向凝固法より結晶配向性を有する純銅・多結晶を作製した。作製した純銅多結晶の巨視的な弾性率を超音波共鳴法と電磁超音波共鳴法を組み合わせた手法により測定した。また、光学顕微鏡観察およびX線極点図測定により、純銅・多結晶における結晶粒形状および結晶配向性を調べた。結晶配向性および結晶粒形状の情報を考慮したinverse self-consistent 近似を用いて、純銅・多結晶の巨視的弾性率を再現可能な単結晶弾性率を算出した。その結果、前年度構築したinverse Voigt-Reuss-Hill近似よりも高精度で単結晶弾性率を決定可能であることが明らかとなった。また、bcc構造を不安定化した Ti-Nb系合金に対して、室温時効に伴う弾性率変化を超音波共鳴法により測定した。その結果、室温時効に伴って弾性率が増加するという特異な現象を初めて明らかにした。電子顕微鏡観察およびマイクロメカニックス理論を用いた解析により、室温時効に伴う弾性率増加の原因は時効に伴うDiffuse ω構造の形成によるものであることを見出した。室温時効に伴う弾性率増加を、酸素もしくはAlの微量添加およびbcc構造の安定化によって抑制可能であるという低弾性率化のための指針を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規な立方晶系の単結晶弾性率決定手法であるinverse self-consistent近似を構築した。また、構築したinverse self-consistent近似は、異方性の強い立方晶系の単結晶弾性率を高精度で決定可能であることを示すことができた。代表的な生体用金属材料であるbcc系のTi合金は、bcc構造の不安定化により強い弾性異方性を有するため、新規に構築したinverse self-consistent近似はbcc系のTi合金の弾性特性の理解に極めて有効である。
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今後の研究の推進方策 |
bcc構造を有する生体用Ti合金の多結晶体に対して、新規に考案した立方晶系の単結晶弾性率決定手法であるinverse self-consistent近似を適用し、その単結晶弾性率を決定する。また、bcc構造を有する生体用Ti合金の単結晶を光学式浮遊帯域溶融法により作製し、ω相の形成と弾性特性との相関関係を明らかにする。また、加工もしくは塑性変形に伴う弾性率変化をinverse self-consistent近似による単結晶の弾性特性解析および単結晶を用いた直接測定により明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度請求額と併せて、使用頻度の高い装置のメンテナンス費用、成果発表のための旅費、消耗品の購入費および英文校正費用として使用し、研究を効率的に進める。
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