研究課題/領域番号 |
26709059
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
渡部 綾 静岡大学, 工学研究科, 助教 (80548884)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 鉄酸化物 / 構造体触媒 |
研究実績の概要 |
本研究は,安価な鉄酸化物を高機能化した触媒システムを創製し,鉄酸化物がもつ格子酸素の自立的レドックス機能を促進し,高速・高効率に反応基質を物質変換する反応システム群を構築することを目的としている。 平成26年度は,鉄酸化物構造体触媒の物質変換特性を評価できる反応装置を製作した。また,鉄酸化物触媒をメタルハニカム担体上に形成することで,化学的機能と物理的機能を融合した多機能型の触媒を創製した。具体的には,塩化鉄と尿素を蒸留水に溶解させ,アルミニウムハニカムをその溶液に浸漬した後,撹拌下で鉄酸化物を水熱法により合成した。この方法により得られた鉄酸化物は,ランダム状にマイクロシートが積層した形状をもち,高比表面積を有する材料であることがわかった。TEM-EDX測定より,マイクロシートは鉄成分とアルミニウム成分が混ざったコンポジット層を形成しており,ハニカム基材から触媒成分が剥離しにくい材料であることも明らかにした。 この鉄酸化物構造体触媒にPdとKを含浸担持することで,573Kの比較的低温で水性ガスシフト活性が発現した。得られた触媒のシフト性能はまだ目標数値には達していないものの,銅系触媒と比較して遜色ない活性を示した。 FT-IRにより水性ガスシフト反応のメカニズムについて検討した。鉄酸化物構造体触媒におけるCO分子の吸着脱離挙動を観察すると,Pd担持により架橋型のCO吸着種が観測され,昇温により二座型の炭酸塩が生成した。本結果は,PdとFeの界面にCOが吸着し,鉄酸化物の格子酸素により酸化されるレドックス型の反応機構を示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
鉄酸化物構造体触媒の創製とその水性ガスシフト性能評価については予定通り進んでいたが,エチルベンゼン脱水素反応に対する触媒特性評価が十分に実施できていない。アルミニウムハニカム上に鉄酸化物層形成が難しく,予想以上に時間がかかってしまった。また得られた鉄酸化物層が触媒担体となりえるか妥当性の検討に時間を費やした。脱水素の評価がやや遅れているが,既に着手し始めており、平成27年度の早期に遅延を取り戻せるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,(1)前年度に創製した鉄酸化物構造体触媒の改良を行ない,水性ガスシフト反応に対して目標値を達成する触媒を開発し,(2)エチルベンゼン脱水素やナフタレンの水蒸気改質に対する触媒特性評価を行ない,物質変換システム群の構築を図る。また(3)鉄酸化物構造体触媒の構造・物性について評価し,鉄酸化物構造やそのレドックス機能が物質変換システム群に与える影響を明確にする。
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