研究課題/領域番号 |
26709061
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
荻 崇 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30508809)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ナノ構造体 / 微粒子 / 省資源化 / エアロゾル / 機能性材料 / 光触媒材料 / 電極触媒材料 |
研究実績の概要 |
本研究は(1)新規ナノ構造体合成装置の作製、エアロゾルの一般動力学方程式の数値計算、ナノ粒子分散液の作製を検討し、その後で(2)各種材料のナノ構造化(ポーラス、中空、モスアイ、コアシェル)と光触媒、蛍光体、電極触媒、磁性体における性能評価を行うことを目的としており、平成26年度は以下の研究を実施した。 1)新規噴霧乾燥装置の作製:最高温度1200℃で乾燥操作が可能な噴霧乾燥装置の作製を行った。噴霧装置内のガスの流速および温度分布を熱流体計算ソフトにより求めた。 2)作製した新規装置でモデルナノ粒子でのナノ構造体合成実験:シリカナノ粒子およびテンプレートであるPSL(ポリスチレンラテックス)粒子を用いて、ナノ構造体を合成し、実験操作因子(原料濃度、液滴径、粒子径、操作温度、滞留時間)が粒子性状(粒子径、細孔径、表面性状)に及ぼす影響を明らかにした。また、シリカナノ粒子のサイズは16、52、115、360 nmを用いて行い、コアシェル構造からコンポジット構造まで様々な構造を持つ微粒子を合成した。 3)粒度分布および粒子径が制御されたPSL粒子の高濃度合成:液相法により、反応温度、反応時間、開始剤添加量、スチレン濃度を調整することで、粒子径が20-300nmで制御された単分散のPSL粒子を合成可能な操作因子を見出した。 4)酸化チタンナノ粒子をモデル粒子としてビーズミル分散装置によって ナノ粒子分散液の作製を行った。操作条件(回転数、分散剤の有無、pH、分散時間)が分散液の物性(分散粒子径、濃度、粘度)へ及ぼす影響を明らかにして、安定した酸化チタンナノ粒子分散液の作製指針を見出した。 5)フェノール原料とポリスチレン粒子を出発原料に用いて、ポーラス構造を持つカーボン粒子の合成を行い、白金を担持後に電極触媒性能を測定した結果、市販の粒子と同等の性能を持つ白金担持カーボンナノ構造体微粒子の合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度の計画は、主に合成装置の作製、モデルナノ粒子による構造体の合成、ナノ粒子分散液の作製であったが、モデルナノ構造体の合成だけにとどまらず、カーボン粒子の構造体の合成とその特性評価およびテンプレート材料であるポリマー粒子の合成と粒子性状の制御まで実施するに至った。これにより、ポーラス構造、コアシェル構造、コンポジット構造など各種のナノ構造体合成が可能となると同時に、新たに興味深い現象も確認された。よって今年度は、各種の機能性材料に適応した展開が期待できると考え、当初の予定より進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方策として、平成27年度は主に光触媒材料、磁性体材料、キャパシタ材料の開発を行う。 1)光触媒材料としては、噴霧法による酸化タングステン系ポーラス構造体の合成を検討する。酸化タングステンナノ粒子の噴霧乾燥法およびタングステン酸アンモニウム水溶液の噴霧熱分解法を用いて、ポーラス構造を持つ酸化タングステンナノ構造体の合成を行う。噴霧原料液の粒子濃度、テンプレート材料として用いるポリスチレンラテックス粒子添加量、反応場の温度、滞留時間を制御することで、比表面積と結晶子径が制御された酸化タングステンナノ粒子構造体を合成できる操作条件を見出す。 2)磁性体材料としては、噴霧火炎法または液相法による酸化物コート鉄系ナノ粒子の合成とアンモニアガスとの気固反応によるコアシェル構造型窒化鉄ナノ粒子の合成を行う。噴霧火炎法による酸化物コート鉄系ナノ粒子の合成については、海外の研究協力者の助言を得るためETHへ訪問する。合成した粒子の構造(粒子径や膜厚)と磁性特性との相関を実験的に明らかにして高飽和磁化および保持力を持つ磁性体材料の合成を検討する。 3)キャパシタ材料としては、マイクロ波加熱装置(新規購入予定)を用いた液相法による中空構造型カーボン粒子の合成を行う。テンプレート材料にはポリスチレン粒子を用いてカーボン源としてアミノフェノールを用いる。H26年に見出したテンプレート材料であるPSL粒子の合成指針に基づいて、フェノール濃度との混合比を調整することで、粒子径および膜厚が制御された中空構造カーボン粒子の合成を行う。また、合成した粒子は電池を作製して性能を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、既往の反応器を用いて粒子合成を実施した事などが理由で材料費などの消耗品を低く抑えることができた。また今後、新たな反応器および評価装置の作製を行うため意図的に消耗品の使用量を抑えた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は研究を促進するために海外研修の旅費として使用する。また構造および形態が制御されたナノ粒子材料の合成と性能に関する実験および評価のための設備備品(マイクロ波加熱装置)、原料および材料などの消耗品として、また本研究課題の研究成果の国内外で発表、論文化のために研究費を使用する
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