本研究の目的は革新的な培養手法を開発することである。具体的にはナノファブリケーション技術を活用して「環境中に設置するだけで自動的に微生物を分離培養可能」な微生物分離培養デバイスの開発、およびW/Oエマルジョンを活用し、極小容器中(油相中)で微生物を培養するという新しいコンセプトに基づいた分離培養方法の開発である。 ①微生物を捕まえる罠:前年度までにおいて自動的に微生物を分離培養可能な新規手法を用いて、多様な環境中(土壌、下水処理場の活性汚泥)から網羅的に微生物を分離し16sRNA 遺伝子配列を決定して、従来法で得られる分離株の多様性と比較解析を行った。ところ、獲得された菌株の新規性については違いがほとんど見られなかった。そこで、本年度は、全く異なるタイプのデバイスの開発を行ったところ、モデル微生物および環境微生物でより簡便かつ高効率に純粋菌株の獲得が可能なことを実証するに至った。
②ピコリットル培養:前年度までの検討で、新規手法においてはコロニー形成率の著しい向上が確認された。またその原因として新規手法では増殖不能状態に陥っている微生物を活性化する働きがあること、さらに増殖不能状態の微生物が活性化して増殖を開始するためには、何らかのトリガーが必要であり、それは異種間・同種間の相互作用によって引き起こされることが示唆された。今年度は、本手法で得られた分離株を用いて、異種間・同種間の相互作用により、増殖が促進されるペアを複数探しだすことに成功した。さらにその分離株のペアを上記ピコリットル培養で共培養することで、実際に増殖が促進することを実証した
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