研究課題/領域番号 |
26709064
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
杉浦 慎治 独立行政法人産業技術総合研究所, 幹細胞工学研究センター, 主任研究員 (10399496)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生体材料 / 細胞 / バイオ関連機器 |
研究実績の概要 |
予備実験の結果より、申請者らがこれまでに開発した活性エステルタイプの光開裂型得架橋剤を用いてゼラチン系の光分解性ゲルに細胞を内包することで、限定された条件で細胞の生存率を保ったまま細胞分離が実施可能であることが確認されている。しかしながら、活性エステル基の細胞毒性が問題となり、低架橋密度のゲルを使用する必要があるため、浸潤能評価が可能なゲル組成での細胞分離は実現していない。この問題を解決するために、本年度はクリック反応性光開裂型架橋剤を新たに合成した。動的粘弾性変化からクリック反応のゾルーゲル転移を確認したところ、5分以内にG′がG″を上回り、その後、数十分間にわたってG′の上昇が確認された。クリック架橋で作成した光分解性ゲルにマイクロパターン光を照射したところ、照射部位のハイドロゲルが照射パターンに応じて分解したことが確認された。クリック架橋で作成した光分解性ゲルにに細胞を内包化したところ、架橋剤の広い濃度範囲で、包埋された細胞が高い生存率を示すことが確認された。一方、活性エステル型の架橋剤を利用した場合では、架橋剤濃度の高い領域で細胞の生存率が急激に低下することが確認された。これらの結果より、本発明のクリック型光開裂性架橋剤が、既報の活性エステル型の光開裂性架橋剤と比べて、より細胞障害性傷害性の低い優れた架橋剤であることが確認された。 また、クリック型の架橋剤を用いることで、マトリゲルという添加因子を含んだ系においても、光分解性ハイドロゲルを形成することが可能であることを確認した。マトリゲル存在化存在下において、光分解性ハイドロゲル中における細胞の増殖がより顕著であることも確認され、がん細胞の浸潤能の評価に適した光分解性ゲルの組成が見出された。 本研究の成果により、特許を2件出願し、国際学会発表を1件予定しており、論文を1本投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初の計画どおりクリック反応性光開裂性架橋剤を合成し、その評価を進めた。その結果、細胞の生存率を保持したまま細胞を光分解性ゲルに内包でき、その光分解性ゲルをマイクロパターン光照射により分解できることが示された。また、がん細胞の浸潤能の評価に適した光分解性ゲルの組成も見出されつつあり、次年度の細胞分離系への適用に向けた準備が整ったと言って良い。従って、現在までの達成度は概ね順調に伸展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね順調に研究が進展しているため、計画通りに研究を進める。また、本細胞分離法の実用化に向けて細胞分離の自動化装置の開発研究も並行して進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議での発表を予定していたが、所内業務と日程が重なってしまい、キャンセルした。また、非常勤職員を公募したが、適任者が見つからなかったため、人件費に手当てしていた予算を次年度以降に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度に繰越し、来年度の国際会議用の旅費及び人件費として使用し、研究の推進と成果の発表に使用していく。
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