研究課題
フローサイトメーター等の従来の細胞分離法では、表面抗原をマーカーとして細胞を分離する。一方、がん組織や幹細胞培養系などのヘテロな細胞集団の中にはマーカーの定まっていない細胞も多く、細胞の機能を細胞毎に個別に解析して細胞を分離する手法の開発が期待されている。申請者の杉浦らはこれまでに、光で分解するゲルを簡便に調製できる光開裂型架橋剤を独自に合成し、ゲル内やゲル上での細胞マニピュレーションに応用してきた。本研究ではこの光分解性ゲルを利用して、正常細胞とがん細胞の混合培養系から三次元培養下での形態や、浸潤能、薬剤耐性といった細胞機能を指標として悪性度の高いがん細胞を単離する新手法を開発する。昨年度までに、本細胞分離方法に適したクリック架橋型光開裂性架橋剤の合成を行い、光分解性ゲルの調製条件および光照射条件に関する検討を行っていた。本年度は、この光分解性ゲルを用いてマウス乳癌由来の細胞株の分離を行った。光分解性ゲル内の細胞形態に基づいて分離し、コロニー状の細胞と粒状の細胞とを取得した。取得したコロニー状の細胞と粒状の細胞の腫瘍形成能や転移の過多を検討したところ、それぞれの細胞が異なる性質を示した。以上の結果は本研究の細胞分離法の有効性を示す結果と考えられ、この結果に基づいて論文投稿を行った。また、蛍光イメージングに基づく細胞分離については前年度に引き続きプロトコル検討を行った。また、前年度までに出願した特許について外国出願を1件行い、平成26年に出願していた特許が登録された。
1: 当初の計画以上に進展している
前年度までにモデル細胞系からの細胞分離方法をほぼ確立し、今年度はマウス乳癌由来の細胞からの細胞分離を試みており、当初の計画に含まれていないところまで研究が進んでいる。
来年度は研究のさらなる発展を目指し、細胞分離の自動化のためのプロトコル開発やがん検査法の開発に向けた予備検討を進める。
当初の計画では博士研究員の人件費を専従率100%で計上していた。前年度に引き続き適任者が見つからなかったため、専従率50%で雇用し、本研究の推進に従事させた。事実上、この差額分が次年度への繰り越しとなっている。
次年度以降の人件費として使用し、研究の推進のために使用していく。
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