研究課題/領域番号 |
26709068
|
研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
福場 辰洋 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋工学センター, 技術研究員 (80401272)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 化学センサ / 深海 / 光ファイバ / 現場計測 / pH |
研究実績の概要 |
平成26年度は、まず光ファイバ化学センサの卓上プロトタイプを構築し、評価を行った。まず光ファイバ端面で計測を行う従来方式の光ファイバpHセンサについて、市販で入手可能なものを選定し導入した。pH指示試薬を含んだpHパッチを用いて、海水pH計測を想定した複数のpH標準液を用いて性能を評価した。その結果、海水のpH変化に伴う指示試薬の吸光ピークの変化を計測可能であることが分かった。同時に同タイプの光ファイバpHセンサについて、深海環境における運用を想定してレンズ及びミラーからなる光学系の必要性、及び耐圧化について検討を行った。その結果、光源に十分な光量を得ることができればレンズなどの光学系は必要なく、ファイバ端面及び光反射用のミラーを直接高圧環境に暴露することで計測可能であると結論した。 多点同時計測を可能にするヘテロコア光ファイバセンサについて、基礎評価用として単点計測が可能なセンサ及び光源・光検出装置を一式導入し、基礎評価を実施した。クラッド径125μm、伝送路コア径50μm、ヘテロコア部コア径3μm、ヘテロコア部長さ20mmの光ファイバpHセンサを本研究用に特注した。pH指示試薬としてコンゴーレッド及びブロモフェノールブルーを固定したものを導入し、基礎的な評価を開始した。その結果、pH変化による吸光度の変化は確認できたが、計測値が光ファイバの曲がりに大きく依存することも明らかとなった。 光ファイバセンサの耐圧化に必須となる光ファイバ貫通コネクタの仕様を検討し、コア径300μmの光ファイバを用いて、1ペア2本の光ファイバからなる貫通コネクタを作製し、評価した。3000m相当水圧(30MPa)までの加圧試験においても漏れは無く、波長550~950nmの範囲では水圧による減衰の変動がほとんど確認されなかったことから、本ファイバ貫通コネクタを実際の計測装置の構築に使用可能であることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ファイバ端面で計測を行う従来方式の光ファイバpHセンサについては、計画通りに複数のpH標準液を用いて性能評価を実施することができた。一方で長期安定性に関する評価は現在も継続して実施中であり、平成27年度早々には結論を得ることができる。併せてレンズ及びミラーからなる光学系の必要性、及び耐圧化について検討するなど、現場仕様の光ファイバ化学センサの実現に向けて順調に研究が進展している。 一方で、多点同時計測を可能にするヘテロコア光ファイバセンサについては、基礎評価用として単点計測が可能な複数の光ファイバセンサ及び光源・光検出装置を一式導入し、基礎的な評価を開始したものの、特にヘテロコア部における光ファイバの曲がりが計測値に大きく影響を及ぼすことが分かった。また、曲がりによるヘテロコア部の断線が容易に起こりえることも確認した。pHセンサとしての基本性能については長期安定性に関する評価も含めて現在も継続して評価を実施しているが、評価結果についての結論を得るには、速やかに安定した計測環境を構築する必要がある。 光ファイバセンサの耐圧化に必須となる光ファイバ貫通コネクタについては、本研究の中核的な開発テーマの一つであることから、先行して試作と評価を実施した。その結果、3000m相当水圧(30MPa)までの高圧環境においても減衰等の変動がほとんど無いことを示すなど、これについては計画以上の進展を見せている。
|
今後の研究の推進方策 |
ファイバ端面で計測を行う従来方式の光ファイバpHセンサについては、開発の基盤となるものを市販品として入手可能である。また、高圧環境下における使用時においても特にレンズなどの光学系を必要としないなどの利点も明らかになってきている。そこで従来方式の光ファイバpHセンサについては、ヘテロコア光ファイバセンサより先行して、多点計測が可能なものも含めて、より早期に現場展開可能なセンサシステムを実現できるように進める予定である。これにより光ファイバ化学センサの現場展開に必要な基盤技術を早期に確立することが可能になるため、ヘテロコア光ファイバセンサの迅速な現場展開につなげることができる。 多点同時計測を可能にするヘテロコア光ファイバセンサについては、ヘテロコア部における光ファイバの曲がりを防ぐための固定法を早期に確立する。それにより、pHセンサとしての感度特性や長期安定性等について具体的な評価を行うことが可能なる。その際は、卓上よりもさらに堅牢性が求められる現場運用シナリオも念頭に入れた設計とすることで、速やかで確実な現場展開を可能にする。 光ファイバ貫通コネクタについては、これまでの試作と評価において、良好な特性を示している。今後はさらに安定した光源を用いるなどして特性の詳細な評価を行うと共に、従来方式の光ファイバpHセンサと組み合わせて、高圧環境下に置ける特性評価を実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に予定されていた、ヘテロコア光ファイバの詳細及び長期特性評価試験を実施するための一般機器類、及び試薬類を導入する予定であったが、同光ファイバの特性を安定して計測するためのファイバ固定方法を先行して確立する必要があることが判明した。そこで、詳細及び長期特性評価実施を平成27年度に延期したため、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成27年度第1四半期において、ヘテロコア光ファイバ化学センサを用いて安定的にpH計測を実施し、その特性を評価するためにファイバ固定方法を確立する。その後に、同センサのpH計測性能および長期安定性などの特性評価を速やかに実施する予定である。次年度使用額はその際の恒温装置、及びpH標準液などの購入に使用する。
|