研究課題
平成28年度はこれまで採取した試料の化学分析、特に有機物に着目して分析を行った。これまでの研究では、縞状鉄鉱層には有機物はほとんど含まれていないと考えられていたが、本研究で採取した試料には最大で0.3wt%ほどの有機物が含まれており、また鉄含有量と逆相関の関係性を持つことから鉄鉱物が有機物の起源となる生物活動によって沈殿したことが明らかになった。つまり、当時の浅海域にはすでに鉄を沈殿させるような微生物を主体とするような生態系が広がっていたことを示唆する。また、昨年度までの研究結果からクロムの化学的濃集は一部の海洋が酸化的であったことを示唆することから、これら浅海域に生息していた生物は酸素発生型光合成細菌である可能性が高い。32億年前にすでに生命がこのような進化を遂げていたことは、近年、他の研究からも明らかになりつつあるが、本研究では無機的および有機的な両面からのアプローチでその証拠を示しており説得力のあるものであると考える。これらの成果は、Goldschmidt Conferenceや地球化学会などで発表された。また、昨年度より、熱水フロースルー実験装置を用いて、鉄鉱物やクロム鉱物の変質実験を行っているが、今年度は出発物質となる低温で生成した水酸化物と熱水実験の生成物を電子顕微鏡や分光学的手法で詳細に観察した。その結果、低温熱水条件下でのクロムスピネルの生成が確認された。しかしながら、確認されたクロムスピネルはナノ粒子の集合した多結晶体であり、縞状鉄鉱層中に見られたクロムスピネルとは異なる構造であった。これは実験条件や時間スケールが天然とは異なるためであると考えられ、将来的にはクロムスピネルの結晶成長の条件を明らかになるために、さらに実験的な研究を進めていく必要がある。この研究成果もGoldschmidt Conferenceや地球化学会にて発表された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Applied Geochemistry
巻: 受理 ページ: 受理
Journal of Hazardous Materials
巻: 329 ページ: 49-56
http://dx.doi.org/10.1016/j.jhazmat.2017.01.019
Swiss Journal of Geosciences
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1007/s00015-016-0240-5
Origin of Life and Evolution of Biospheres
10.1007/s11084-016-9518-x