本研究では,約32億年前に形成した縞状鉄鉱層中のクロムスピネルの起源とクロム濃集の時空間的広がりを明らかにするために,南アフリカバーバトン地域での野外調査および鉄,クロム水酸化物の変質実験を行った.その結果,これまでマグマからしか形成しないと考えられていたクロムスピネルが,低温熱水環境下でも結晶化することが実証された.また,化学プロセスによるクロム濃集は,一部の露頭に限られていた.クロム濃集を規制する要因として,当時の鉄の供給源となった熱水活動の強さと堆積環境が考えられる.これらの結果は,当時の海洋にはクロムが酸化的な溶存種で溶解しており,海洋の一部がすでに酸化的だったことを示唆している.
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