枯渇油田を対象としたCO2地中貯留(CCS)技術の影響を評価するため、国内油田の3カ所の生産井から採取した油層水と原油を用いて、現場油層環境を模擬する高温高圧培養実験とCCS後の高濃度CO2環境を模擬する高温高圧培養実験を進めた。その結果、ある1カ所の油田の現場油層環境の培養条件において生物的原油分解反応が観察された。一方で、CCS環境を模擬する高圧培養実験では、培養初期からCO2濃度の増加による著しいpHの減少が観察され、それにより原油分解メタン生成反応の阻害効果が観察された。 また、上記油層試料のうち原油分解ポテンシャルが存在しない油層試料に原油分解微生物コミュニティを導入する実験およびそのCO2地中貯留の影響評価試験を実施した。本研究で獲得した原油分解メタン生成微生物コミュニティを用いた高圧培養実験の結果、低CO2濃度環境においては当該微生物コミュニティーの導入により原油分解メタン生成反応が観察された。その一方で、高CO2濃度環境ではその阻害効果が観察され、その主な原因はCO2濃度の増加によるpHの減少であると考えられた。 本研究で獲得した原油分解メタン生成微生物コミュニティーによる原油分解メカニズムについて、有機地球化学的および分子生物学的手法により解析を実施した結果、当該微生物コミュニティーは原油成分中のトルエン成分を分解・メタンを生成することが明らかになった。また、その分解反応を担う中核的微生物種を特定した。
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