研究課題/領域番号 |
26709071
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
永岡 賢一 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (20353443)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 磁場閉じ込め核融合 / 高エネルギー粒子 / 波動粒子相互作用 / アルベン波 / 位相統計解析 |
研究実績の概要 |
エネルギー開発を目指した核融合燃焼プラズマ実証において、核融合反応により生じる高速イオン(α粒子)をプラズマ中に閉じ込めることが必要である。ところがプラズマ中に励起される電磁流体波動(アルベン波)が高速イオンを損失させてしまうことが知られており、その制御手法の開発が急務の課題となっている。近年、観測されたプラズマ中の局所電子加熱によるアルベン波の安定化現象の物理過程を解明し、アルベン波の外部制御による高速イオン損失の抑制法を確立することが本研究の目的である。 本研究の柱の一つである高速イオンとアルベン波の相互作用(位相関係)を直接計測する位相統計解析システムの開発を実施した。FPGAモジュールと高速デジタイザを組み合わせた計測システムを構築し、磁場揺動(アルベン波)の高速デジタイザと粒子検出器用パルス解析を組み合わせた装置をLHD18サイクル実験に導入した。既設の粒子検出器のみでは、高速イオンの進行方向が一方向に限られていたため、新たに1chの増設を行い、プラズマに接線入射された高速イオンを対象に動作試験と運転パラメータの調整を実施した。その結果、10^4以上のカウント率で高速イオンの検出時刻を全ての検出粒子に対して行なえることが確認された。LHD実験期間において、様々な実験条件で、このシステムを稼動させ、多くのデータ取得ができた。位相統計解析のためのプログラム開発も進捗しており、いくつかの放電に対して、位相統計解析が可能であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
機器の開発は、企業からのサンプルプログラムの提供などにより当初計画より進んでいるが、位相統計解析の結果が当初の期待ほど精度が出ていない。検出器の見込む視線の最適化検討などが新たな課題となっている。総合的には、概ね順調と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、位相統計解析装置開発は大成功しているため、ヘイロトロンJ,TJ-II装置などへの展開とシステムの対応を進める。LHD実験では、視線の最適化検討を進め、第19サイクル実験に備える計画である。これらのシステムの稼動が実現すれば、局所電子加熱などによる高速イオン励起アルベン波の外部制御を物理機構の理解のもので、実現できる段階へと進めると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画が順調に進展し、原理実証用機器開発が成功した。そのため平成27年度に予定していたTJ-II装置、ヘリオトロンJ装置への導入の検討が前倒し可能と判断し、基金分予算を一部前倒し請求を行なった。ところが昨年度の大型ヘリカル装置でのプラズマ実験で初期結果では、計測器の観測視線の検討が更に必要であることがわかり、時間を要した。結果として、LHD以外への装置への導入検討は、元の計画通り平成27年度に実施予定となった。
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次年度使用額の使用計画 |
当初計画どおり、原理検証用機器開発が進展したため、TJ-II装置、ヘリオトロンJ装置への導入の検討をLHD実験の結果を踏まえて実施する。また、計測視線の再検討による改造を実施し、LHDのプラズマ実験でも位相統計解析による高エネルギー粒子とアルベン波の相互作用計測に再挑戦する。 本研究の計測機器開発部分をまとめ、国際会議等での発表や論文化を平行して進め、DIII-Dをはじめとするトカマク装置への導入の検討を始める。
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