研究課題
原子力材料の照射劣化の主因の一つである溶質・不純物クラスターの形成および発展を理解する上で、溶質・不純物原子の拡散係数は重要なパラメーターである。原子の拡散には空孔や格子間原子が関与するため、それらが熱平衡時に比べて大量に導入される照射下では拡散が大きく促進される場合がある(照射促進拡散)。照射促進拡散は反応速度論で議論されており、照射条件(照射速度・温度・照射量)や材料のシンク濃度に依存するとされる。しかしながら、これを実験的に調べた報告はあまり多くなく、特にRPV鋼の照射脆化で重要な鉄中の銅拡散に関する研究例はわずかである。そこで、本研究では、銅-鉄拡散対を電子線照射してフレンケル対のみを導入したのちの銅の拡散プロファイルを3D-APで測定し、鉄中の銅拡散に対する照射促進効果を調べることを目的とした。純鉄(5N、水素焼鈍済み)を約5mm×5mm×1mmに切断し、研磨紙および化学研磨によって加工層を十分に除去した。化学研磨後、直ちに1E-5Pa以下に真空引きし、アルゴンイオンスパッタで表面を清浄にしたのちに純銅(5N)を膜厚約3μmまで電子ビーム蒸着した。電子線照射は量研機構高崎研究所1号加速器にて、ビームエネルギー2MeV、ビーム電流10mA、ヘリウムガス雰囲気で行なった。温度制御は熱電対およびセラミックスヒーターで行ない、目標温度の1.5℃以内を保って照射した。照射温度は420℃-620℃、照射時間は1000秒-35000秒である。照射後、3D-APを用いて銅-鉄界面からの銅濃度プロファイルを測定した。570℃で10000秒照射した拡散対の銅濃度プロファイルを570℃で10000秒熱時効した拡散対におけるそれと比較したところ、照射試料ではやや拡散が促進されている可能性が示唆された。一方、固溶限濃度は照射試料・熱時効試料での差異はほぼ見られなかった。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 4件)
J. Nucl. Mater
巻: 485 ページ: 122-128
http://dx.doi.org/10.1016/j.jnucmat.2016.12.040
Physica Scripta
巻: 167 ページ: 45-51
10.1088/0031-8949/t167/1/014068
Physica Status Solidi a-Applications and Materials Science
巻: 213 ページ: 2988-2994
Acta Materialia
巻: 116 ページ: 104-113
10.1016/j.actamat.2016.06.013
巻: 102 ページ: 323-332
http://dx.doi.org/10.1016/j.actamat.2015.09.038
Japanese Journal of Applied Physics
巻: 55 ページ: 5346-5349
http://doi.org/10.7567/JJAP.55.026501
Applied Physics Express
巻: 9 ページ: 253-256
10.7567/apex.9.106601