研究課題/領域番号 |
26710003
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
堅田 明子 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00615685)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 神経幹細胞 / エピジェネティクス / 分化制御 |
研究実績の概要 |
一般に幹細胞は多分化能を有するが、発生期の神経幹細胞は初期には自己複製を繰り返し、中期にはニューロンを産生、その後グリア細胞(アストロサイトやオリゴデンドロサイト)へと分化するように、発生の進行に伴い異なる細胞種への分化能を順次獲得する。胎生後期の神経幹細胞においてBMP2とLIFはそれぞれの受容体を介して下流因子であるSmad1とSTAT3を活性化、これらは核内転写共役因子p300/CBPを介して複合体を形成することで、gfapの転写を相乗的に上昇させ、アストロサイト分化を誘導する。一方、胎生中期の神経幹細胞のBMP2刺激はアストロサイトではなく、ニューロン分化を促すことが報告されているが、このBMP2による発生時期特異的な神経幹細胞の分化細胞種の違いを説明する分子機構は不明である。そこで本研究では、BMP2の下流因子Smad1の標的遺伝子を、分化細胞種の異なる二つの発生時期由来神経幹細胞において同定することで、発生時期依存的な神経幹細胞の分化制御機構を解明することを目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分化細胞種の異なる二つの発生時期、胎生11.5日(E11.5)およびE14.5のマウス終脳より神経幹細胞を単離しBMP2で刺激後、抗P-Smad1抗体を用いてクロマチン免疫沈降(ChIP)を行った。この試料からライブラリーを作製、次世代シークエンサーにより配列解読(ChIP-seq)することで、発生時期特異的なP-Smad1の標的遺伝子を網羅的に同定した。その結果、E11.5では 2934、またE14.5では705箇所のP-Smad1結合領域を同定した。そのうち、発生時期に関わらずP-Smad1が結合する領域はわずかであり、E11.5においては85%、E14.5 では39%が発生時期特異的なP-Smad1結合領域であることが明らかとなった。これまでに、この時期特異的なP-Smad1標的遺伝子の一例として、E14.5ではgfap、またE11.5ではニューロン分化に関わる転写因子Neurogenin1(Ngn1)を同定している。
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今後の研究の推進方策 |
P-Smad1のChIP-seqから発生時期に特異的なSmad1結合領域を同定することができた。そこで次に、ChIP-seq 解析と同時期同条件の神経幹細胞を用いてBMP2刺激後に発現変動する遺伝子をRNA-seqにより解析する。これら2つの網羅的解析により、E11.5、14.5の2つの発生時期でBMP2の応答性が異なる遺伝子とP-Smad1結合領域を対応付ける。ところで、時期特異的なSmad1結合の選択機構の一つとしてDNAメチル化修飾の有無が挙げられる。しかし、Ngn1/2の転写開始点(TSS)近傍のSmad結合配列では発生時期を問わずメチル化修飾が常に低く、ヒストン修飾による制御が考えられる。そこで、E11.5およびE14.5のNSCにおいて、様々なヒストン修飾抗体(H3K4me1, H3K4me3, H3K9me3,H3K27me3等)を用いてChIP-qPCR, もしくはChIP-seqを行うことで、Ngn1/2発現制御領域のヒストンメチル化修飾を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
RNA-seqのサンプル調整が間に合わず、この実験を次年度に繰り越すこととした。 この実験に必要な研究費の一部を繰り越す。
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次年度使用額の使用計画 |
RNA-seqの試薬購入のため使用
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