研究課題
神経幹細胞は発生初期には自己複製を繰り返すが、発生の進行に伴い異なる細胞種への分化能を順次獲得し、中期にはニューロンを産生、その後アストロサイトやオリゴデンドロサイトへと分化する。胎生後期の神経幹細胞においてBMP2は下流因子であるSmad1を活性化させることで、gfapの転写を相乗的に上昇させ、アストロサイト分化を誘導する。一方、胎生中期の神経幹細胞のBMP2刺激はアストロサイトではなく、ニューロン分化を促すことが報告されているが、このBMP2による発生時期特異的な神経幹細胞の分化細胞種の違いを説明する分子機構は不明である。本研究では、BMP2の下流因子Smad1の標的遺伝子を、分化細胞種の異なる二つの発生時期由来神経幹細胞において同定することで、発生時期依存的な神経幹細胞の分化制御機構を解明することを目指した。分化細胞種の異なる二つの発生時期、胎生11.5日(E11.5)およびE14.5のマウス終脳より神経幹細胞を単離しBMP2で刺激後、抗P-Smad1抗体を用いてクロマチン免疫沈降(ChIP)を行った。その結果、E11.5とE14.5でそれぞれ発生時期特異的なP-Smad1結合領域を同定した。一方、BMP2刺激後発現変動する遺伝子群をE11.5とE14.5においてRNA-seqにより同定したが、P-Smad1標的遺伝子に対して、遺伝子発現が相関(上昇)する割合も各発生時期において2-3割と低いことが明らかとなった。これらの解析を通して、ニューロン分化とアストロサイト分化を誘導する重要遺伝子の同定には至ったが、今後は、ATAC-seqなどオープンクロマチン領域を特定する解析を行うことで、時期特異的P-Smad結合が各発生時期のクロマチン構造に由来することを示していく。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Proc Jpn Acad Ser B, Phys Biol Sci.
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