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2015 年度 実績報告書

腫瘍微小環境における癌幹細胞維持ならびに悪性化機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 26710005
研究機関東京大学

研究代表者

大澤 毅  東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任助教 (50567592)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワード癌 / ストレス / ゲノム
研究実績の概要

癌の増殖と転移には腫瘍微小環境が重要な役割を果たす。申請者は低酸素下の栄養飢餓で残存する癌細胞が腫瘍の悪性化及び治療抵抗性を促進することを見出し報告してきた。本研究はこの低酸素・低栄養によって誘導される癌の悪性化のメカニズムを癌幹細胞の詳細な解析から解明し、低酸素・低栄養に抵抗性な癌幹細胞を標的とした新しい癌の制御法を開発し、現存する化学療法や血管新生阻害療法との併用で相乗効果が期待できる新しい標的分子の探索と治療への応用のための基盤となる研究を目的とする。
本年度の研究成果として、(1)低酸素・低栄養で癌細胞における癌幹細胞(CD44highCD24low)が顕著に増加する細胞における癌幹細胞をFACS分離し、癌悪性化に寄与するRORX転写因子を同定したことから、レトロウィルスベクター(pMX-RORX)を作成し、HeLa細胞など幾つかのヒトがん細胞株でRORXの安定的な過剰発現株の樹立に成功した。
(2)RORXの安定過剰発現株を用いた細胞増殖アッセイを行ったところRORX過剰発現は癌細胞のin vitroの細胞増殖に対して大きな影響はなかったものの、in vivoの腫瘍形成能が顕著に増加した、このことから、低酸素・低栄養などの腫瘍微小環境における癌悪性化機構の一つにこの転写因子の関与が示唆されたため詳細な解析を現在行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

(2)低酸素・低栄養の癌幹細胞におけるEIF2シグナルやストレス応答反応の関与

我々はHeLa, HepG2, A431, T98G癌細胞株に共通して低酸素・低栄養で特異的に発現誘導される遺伝子群をマイクロアレー解析、シングルセル解析、オントロジー解析、パスウェイ上流解析から発見しており、特に転写制御機構において重要な転写因子を複数同定した。その一つである転写因子RORXの解析から、幾つかの癌細胞株でRORXの過剰発現による細胞増殖能、腫瘍増殖能をin vitro及びin vivoのマウス腫瘍移植実験において検討し、in vivoにおける増殖能に寄与することを明らかにした。このことから、本研究は計画どおり概ね順調に進展していると考えられる。
また、低酸素・低栄養の癌幹細胞におけるEIF2シグナルや他のストレス応答反応の関与に関してはさらに詳細な解析が必要であるため、次年度も引き続き、低酸素・低栄養の癌幹細胞におけるEIF2シグナルや他のストレス応答反応の関与について検討を行う。

今後の研究の推進方策

今後の研究の推進方策として28年度の研究計画は、低酸素・低栄養の癌幹細胞におけるRORX転写制御の役割を行う予定である。
低酸素・低栄養の癌幹細胞においてエピゲノム・転写制御が重要だと考えられるが、どのようなエピゲノム・転写制御が行われているか不明である。ES細胞の分化で重要な転写因子は転写休止状態のヒストンH3K4me3、及び、H3K27me3のビバレントマークが入ることが知られている(Stock et al. Nature 2007)。申請者は、(1)ゲノム・エピゲノム解析の研究から、RORXが低酸素・低栄養においてビバレントマークであること、(2)低酸素・低栄養のバルクのCD44highCD22lowの細胞集団で未刺激コントロールや低酸素・低栄養CD44lowCD24lowと比べRORXが発現上昇することを見出している。このことからRORXが低酸素・低栄養の癌幹細胞においてマスター転写制御の役割を持つ可能性があり、これにおいて詳細な解析を行う予定である。
また、低酸素・低栄養の癌幹細胞におけるEIF2シグナルやストレス応答反応の関与に関して、次年度も引き続き検討を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

物品費、及び、海外旅費に使用予定であったが使用しなかったため

次年度使用額の使用計画

物品費、及び、海外旅費に使用予定である

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2016 2015

すべて 学会発表 (11件) (うち国際学会 2件、 招待講演 7件)

  • [学会発表] 腫瘍微小環境から捉えたがん代謝2016

    • 著者名/発表者名
      大澤毅
    • 学会等名
      御茶ノ水がん学アカデミア第122回集会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2016-03-23 – 2016-03-23
    • 招待講演
  • [学会発表] 癌代謝物エタノールアミンリンは低栄養のがんの生存に寄与する2016

    • 著者名/発表者名
      大澤ら
    • 学会等名
      第2回血管生物医学会若手研究会
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      2016-03-04 – 2016-03-05
    • 招待講演
  • [学会発表] メタボロミクスによる新規オンコメタボライトPEtnの発見2016

    • 著者名/発表者名
      大澤毅
    • 学会等名
      第一回生活習慣病とがんの代謝栄養メカニズム研究会(最優秀ポスター賞受賞)
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2016-02-27 – 2016-02-27
  • [学会発表] マルチオミクス統合解析から捉えた腫瘍微小環境2015

    • 著者名/発表者名
      大澤ら
    • 学会等名
      BMB2015(第38回日本分子生物学会年会、第88回日本生化学会大会 合同大会)
    • 発表場所
      神戸
    • 年月日
      2015-12-01 – 2015-12-05
    • 招待講演
  • [学会発表] Tumor microenvironment and cancer metabolism2015

    • 著者名/発表者名
      Osawa T
    • 学会等名
      第46回高松宮妃癌研究基金国際シンポジウム
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2015-11-16 – 2015-11-20
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 低酸素・低栄養で脂肪酸代謝を介して蓄積するオンコメタボライトの解析2015

    • 著者名/発表者名
      大澤ら
    • 学会等名
      第74回日本癌学会学術集会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2015-10-08 – 2015-10-10
  • [学会発表] Cancer cells utilize lipid metabolism under hypoxia and nutrient starvation2015

    • 著者名/発表者名
      Osawa T et al.
    • 学会等名
      18th European Cancer Congress-40th ESMO 2015
    • 発表場所
      Vienna
    • 年月日
      2015-09-25 – 2015-09-30
    • 国際学会
  • [学会発表] メタボロミクスによる新しいオンコメタボライトEAPの発見2015

    • 著者名/発表者名
      大澤ら
    • 学会等名
      第27回高遠シンポジウム
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      2015-08-26 – 2015-08-27
  • [学会発表] オミクス統合解析から捉えた腫瘍微小環境とがん代謝2015

    • 著者名/発表者名
      大澤毅
    • 学会等名
      国立がんセンター東病院悪液質セミナー
    • 発表場所
      千葉
    • 年月日
      2015-08-05 – 2015-08-05
    • 招待講演
  • [学会発表] オミクス統合解析から捉えた腫瘍微小環境とがん代謝2015

    • 著者名/発表者名
      大澤ら
    • 学会等名
      第3回がんと代謝研究会
    • 発表場所
      金沢
    • 年月日
      2015-07-16 – 2015-07-17
    • 招待講演
  • [学会発表] Cancer cells utilize lipid metabolism under hypoxic and nutrient starved tumor microenvironment2015

    • 著者名/発表者名
      Osawa T et al.
    • 学会等名
      春季特別日本血管生物医学会シンポジウム
    • 発表場所
      大阪
    • 年月日
      2015-05-13 – 2015-05-13
    • 招待講演

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公開日: 2017-01-06  

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