研究課題/領域番号 |
26710007
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
植田 幸嗣 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特任准教授 (10509110)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 癌 / バイオマーカー / 糖鎖 / 質量分析 / プロテオミクス |
研究実績の概要 |
平成26年度はProstate specific antigen (KLK3, PSA)、およびCarcinoembryonic antigen-related cell adhesion molecule 5 (CEACAM5, CEA)に付加された糖鎖構造の網羅的な高速定量解析を実施するため、両タンパク質由来トリプシン消化糖ペプチドに特化した質量分析測定条件の至適化を行った。ヒト前立腺癌細胞株、大腸癌細胞株からそれぞれKlk3、Ceacam5遺伝子をC末端Flagタグフュージョンでクローニングし、各種細胞株への強制発現と抗Flagアフィニティー精製によって安定的にPSA、CEAタンパク質スタンダードを入手可能とした。これら腫瘍マーカータンパク質を健常者血清にスパイクし、市販PSA、CEA特異抗体の中で最もRecovery rateが高く両タンパク質を免疫精製可能なもの(クローン)を選定した。さらに質量分析に供することを想定した上で、最終的に界面活性剤が混入しないように工夫するなどイムノアフィニティー精製プロトコルを最適化した。結果的に、10 ng/mlの濃度でスパイクした両タンパク質を血清中から約90%のRecovery rateでアフィニティー精製可能な系を構築することに成功した。さらにNano-flow HPLCのグラジェント、各標的糖ペプチドごとに最適な衝突エネルギースキャン範囲、その他トリプル四重極型質量分析装置の各種電圧条件の決定を行った。これらの条件を用いて、代表者らが開発した高速糖鎖バリエーション定量化技術Erexim (Energy resolved oxonium ion monitoring)法による両腫瘍マーカーの一斉糖鎖構造決定・定量化が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画どおり、PSA、CEAタンパク質をヒト血清から高効率に単離精製する技術、およびそれらのErexim測定条件決定を行うことができた。従って、本研究計画は概ね想定通り順調に進捗していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度にタンパク質糖鎖サブタイプスクリーニングに必要なPSA、CEA由来糖ペプチド分析専用Erexim精製条件、分析条件を至適化した。今後はここで決定した分析手法を用いて腫瘍マーカー糖鎖サブタイプスクリーニングを開始する。PSAについては前立腺肥大症患者、前立腺癌患者、CEAについては重喫煙者、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者、間質性肺炎患者、肺腺癌患者、肺扁平上皮癌患者、胃癌患者、大腸癌患者からそれぞれ採取した血清の測定を行う。上記臨床検体からPSA、またはCEAを単離精製し、そのErexim分析を行うことによって各糖鎖付加部位ごとにどのような糖鎖構造がどのような付加頻度で修飾されているかを網羅的に調査する。この定量情報から、PSAは前立腺肥大症と前立腺癌を区別できる糖鎖サブタイプ、CEAは良性疾患、および癌種を識別できる糖鎖サブタイプを決定することを目的とし、種々の統計学的評価を実施する。決定された高特異度糖鎖サブタイプマーカーはさらに、独立した症例セットを用いた検証試験に供して再現性の確認を行う。
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