研究課題
本研究は、申請者が開発した世界初の糖鎖構造バリエーション高速定量技術、エレクシム法を発展的に応用し、癌・臓器高特異的腫瘍マーカーの開発を行うものである。具体的には、偽陽性による過剰診断が社会問題化しているPSAや、癌を含む多くの疾患で高値を示すなど特異性の乏しいCEAの付加糖鎖を多検体から精密プロファイリングし、真に特定の癌種でしか産生されない「腫瘍マーカーの糖鎖サブタイプ」を同定、臨床実用化を目指す。本研究が達成されることで、次世代腫瘍マーカー開発の知識基盤を構築すると共に、擬陽性の排除による患者の肉体的精神的苦痛の低減、的確で迅速な治療介入による治療成績の向上、さらには大幅な医療費の削減にも繋がることが期待できる。平成28年度は前年度までの研究で同定した腫瘍特異的糖鎖サブタイプマーカーに対して多検体での検証試験を開始した。特定の糖鎖構造のみを精密定量できない従来法(レクチンを使用した各種測定法)は使用せず、ハイスループット処理ロボットとトリプル四重極型質量分析装置を使用した高速、高再現性分析法を構築し、前立腺癌患者血中PSAからのみ特異的に検出される2種類のN型糖鎖構造を定量化、ロジスティック回帰式にて診断するモデルを確立した(PSA G-index)。いずれもPSA検査値が4~10 ng/mlのグレーゾーンを示す前立腺肥大症患者20例、前立腺癌患者20例由来の血清を用いた試験では、従来のPSA値やPSA f/T値では両群を識別できなかったのに対し、PSA G-indexは100%の精度で判別することが可能であった。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度~29年度にかけて計画していた多検体検証試験に耐えうるだけの精度、感度、再現性、スループットを兼ね備えた測定系の構築を完了した。さらに当分析法を用いた中規模試験では前年度までの糖鎖サブタイプマーカースクリーニングと同様の結果を再現することができ、より多検体を追加検証する次年度の計画に支障なく進めることができると判断できた。以上の進捗状況より、計画はおおむね順調に推移できている。
平成28年度に構築し、中規模検証試験で良好な結果が得られたPSA G-indexについて、がん研有明病院、大阪大学付属病院にて収集されたより大規模な血清検体セットを追加して診断能検証試験を完了させる。その結果を踏まえて、特許申請ののち民間企業と連携して将来的な臨床診断用キットの構築など本研究計画終了後の発展的応用についても準備を進める。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件、 招待講演 7件) 図書 (2件)
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