研究課題/領域番号 |
26710008
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
古賀 宣勝 国立研究開発法人国立がん研究センター, 実験動物管理室, 室長 (70536086)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 大腸がん / がん診断 / がん検診 / miRNA / 便検査 / 便潜血検査 |
研究実績の概要 |
大腸がんの死亡率を低下させるには早期診断が不可欠である。大腸がん検診として便潜血反応検査が世界中で幅広く使われているが、大腸がんを診断する感度および陽性適中率は必ずしも高くなく、大腸がん患者の検査陰性例(偽陰性大腸がん症例)と健常被験者の検査陽性例(偽陽性健常者症例)の存在が問題となっている。一方でmiRNAは、便などの劣悪な保存条件でも比較的安定して存在していると報告されている。そこで本研究では、便中miRNAの発現解析を行い、便潜血反応検査偽陰性大腸がん患者の拾い上げや便潜血反応検査偽陽性健常者の除外が可能かを検討し、便潜血反応検査の補助検査としての便miRNA検査の確立を目指している。 平成26年度までに、便潜血反応検査の採便キットを用い、定量的便潜血反応検査免疫法を行った後の残液からmiRNAが抽出可能であることを確認し、既取得検体におけるmiRNAの絶対定量法を確立した。しかし、本研究開始以前に取得した便は1被験者あたり1検体であり、広く行われている便潜血検査免疫法の二日法とは異なるため、本絶対定量法は方法論の確立に過ぎない。 そこで平成27年度までに新たな検体回収を行い、大腸がん患者75例(外科的切除58例、内視鏡的切除17例)、前がん病変患者15例、非腫瘍性ポリープや所見なしの健常者50例の新規症例150例を集積した。便潜血検査の採便キットを用い、二日間の便検体は150症例中143症例(95.3%)から提出された。便潜血検査の陽性率は、大腸がん患者85.3%、前がん病変患者20.0%、健常者8.0%であった。便miRNA検査のROC曲線を作図しAUCを計算すると、miR-106aが0.687、miR-223が0.603、miR-92aが0.754であった。今後、便潜血検査と便miRNA検査を合わせた検査における感度や特異度などを詳細に検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究二年度に大腸がんと診断され外科的切除前の患者の便だけでなく大腸内視鏡検査にて異常なし・非腫瘍性疾患・前がん病変・内視鏡切除可能な大腸がんなどと診断された被験者の登録を終了した。年度の最後まで症例登録を行ったので、便miRNA検査などの詳細な検討は次年度の初めに行うことになったが、研究は計画通りおおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
研究三年度以降では、二年度までに集積した150例の便検体を用いて確立した便潜血検査と便miRNA検査の評価を行う。さらに大腸がん検診(便潜血検査と大腸内視鏡検査)が行われた新規便検体の前向き集積を行う。研究三年度に約600例の登録を目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末まで新たな臨床検体の登録を行ったため、検体処理や便miRNA検査にかかる費用などが次年度へ持ち越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度には速やかに検体処理とmiRNA発現解析を行う。
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