大腸がん検診として便潜血検査が使われているが、大腸がんを診断する感度および陽性適中率は必ずしも高くなく、大腸がん患者の検査陰性例(偽陰性大腸がん症例)と健常被験者の検査陽性例(偽陽性健常者症例)の存在が問題となっている。一方でmiRNAは、便などの劣悪な保存条件でも安定して存在していると報告されている。そこで本研究では、便中miRNAの発現解析を行い、便潜血検査偽陰性大腸がん患者の拾い上げや便潜血検査偽陽性健常者の除外が可能かを検討し、便潜血検査の補助検査としての便miRNA検査の確立を目指している。 平成28年度までに定量的便潜血検査免疫法を行った後の残液からmiRNAが抽出可能であることを確認し、既取得検体におけるmiRNAの相対定量法および絶対定量法を確立した。進行新生物患者(大腸がん患者と進行腺腫患者を合わせたもの)90例と非進行大腸腺腫患者と健常者を合わせた60例での便潜血検査と便miRNA検査の複合検査の評価を行い、便潜血検査の感度と特異度は74.4%と93.3%だったが、複合検査により感度93.3%と特異度91.7%と改善できる可能性が示唆された。 平成29年度は便潜血検査と合わせるmiRNAを再度網羅的に評価した。miRNAアレイ解析にて、健常者と比べて進行新生物患者で有意に高値であるmiRNAを21種類選択した。全150例における発現解析を相対定量法および絶対定量法で行ったが、残念ながらいずれのmiRNAも再現が得られなかった。理由として便潜血残液中のmiRNAは微量であり、PCR法と比べてアレイ解析では十分な感度が得られていなかった可能性があった。 一方で平均的がんリスクのがん検診適応年齢である症例1367例の便潜血結果と便潜血検査残液由来の便を回収した。そのうち、646例において便潜血検査残液からmiRNAを抽出し、今後の研究に備えた。
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