研究課題/領域番号 |
26710009
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
加藤 洋人 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (60446549)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 免疫ゲノム / 腫瘍免疫 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、平成26年度に収集されたさまざまな臨床がん試料に対して、平成26年度に設計された抗原受容体遺伝子(TCR遺伝子/免疫グロブリン重鎖/軽鎖遺伝子)を標的とするマルチプレックス・プライマー・セットを用いた抗原受容体配列次世代シーケンスを行った。目標としていた症例数の次世代シーケンス解析を完了させた。シーケンス解読と並行しながら、以下3点を進めた。 (I) 収集した臨床がん試料におけるがん浸潤リンパ球のT細胞抗原受容体・免疫グロブリン遺伝子のシーケンス配列を網羅的にデータ化し、腫瘍免疫ゲノム解析に関する基盤的データベースの構築を完遂させた。(II) 臨床がん試料に関する臨床病理学的所見と、次世代シーケンスによって明らかになった網羅的抗原受容体シーケンス配列の相関等について解析し、「抗原受容体レパートリーから見た腫瘍免疫」を検討することが出来るようなデータ解析手法を樹立し、実際に解析を開始した。(III) 各々の症例におけるT細胞あるいはB細胞といった細胞種ごとの抗原受容体配列プロファイルを相互的に比較し、異なる免疫細胞間における抗原受容体レパートリー構成を比較することが出来るようなデータ解析手法を樹立し、実際に解析を開始した。 これらの成果によって、がん浸潤リンパ球のクローナリティの程度の解析、抗原受容体遺伝子配列のmaturationの過程に関する解析、がん部特異的抗原受容体構造の探索等が可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に沿った研究が遂行されているため。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年では、引き続き臨床がん試料における臨床病理学的因子と抗原受容体シーケンスとの相関等を解析し、がん組織における腫瘍免疫システムの全体像を、抗原受容体シーケンス構成という観点から定義付ける。 総合的に得られた成果を基盤として、以下2点の研究を進める。 (I) 免疫グロブリンの全体構造をCHO細胞等の人工的発現系によって再構築・発現することが可能なシステムを作ること。(II) (I)によって免疫グロブリンの全体構造が再現可能となったのちに、以下2項目を進める。(II-A) 抗原受容体がいかなる「がん抗原」を認識しているか探索する。mass spectrometry等によってタンパク/糖鎖/代謝物などを網羅的に検索し、新規がん抗原を同定することを予定している。(II-B) がん環境に存在するがん特異的免疫グロブリンは、それ自体が治療コンテンツとなりうる情報であり、それらの人工的再構成・強制発現系によって、がん免疫療法に応用可能な抗がん抗体を同定することを予定している。 本研究によりがん浸潤リンパ球の抗原受容体構成が網羅的に解明されれば、これまで未開であった「がん免疫システムの全体像」が明らかになると考えられる。さらに、がん抗原および抗がん抗体が新たに同定されることで、新規抗がん療法の開発に繋がる基盤的成果になることが期待される。
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