研究課題
本研究は、環境ゲノム解析技術ならびに培養技術を駆使し、陸域の地下圏環境に棲息する未知アーキア群とその周辺微生物群の実態を明らかにすることにより、地球規模で重要な物質循環プロセスにおける未知アーキアの役割の解明を目指している。今年度は、まず深部油層環境や地下湧熱水環境の地下圏サンプルを採取するとともに、地化学的分析まらびに微生物群集の組成と多様性解析を実施した。昨年度と今年度の解析結果から、陸域の地下圏環境の微生物群集構造は比較的安定しており、またいくつかの地下圏環境においては門や綱レベルの未培養系統群に属するアーキアやバクテリアが優占し、また安定して存在していることが明らかとなった。またメタゲノム解析ならびにシングルセルゲノム解析により、いくつかの未知アーキアならびにバクテリアのゲノム断片の獲得に成功した。特に、門レベルの未知・未培養アーキア系統群については、バイオインフォマティクス解析により90%以上の完全性を有したゲノムの再構築に成功した。現在、そのゲノム情報から未知アーキアの基幹代謝情報の解析を行っているが、同アーキアが地下圏の炭素循環において重要な役割を果たしている可能性が示唆されている。また未知アーキアや未知バクテリアが豊富に存在する地下圏環境試料を採取し、集積培養化を試みている。これまでに、門レベルや綱レベルの未知アーキアと未知バクテリアの集積培養化に至っており、その安定維持に取組んでいる。今後、上記のゲノム情報とあわせて、陸域地下圏アーキア・バクテリアの新生物機能の解明ならびに地下圏環境における生理生態機能の解明に役立てる予定である。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題の推進により、様々な陸域地下圏環境におけるアーキアコミュニティーならびにバクテリアコミュニティーの解析を実施しており、いくつかの陸域地下圏環境において、未知アーキア系統群ならびに未知バクテリア系統群が安定して存在していることを明らかにしている。さらに、門・綱レベルで未知のアーキアやバクテリアのゲノム断片を獲得し、特に未知アーキアから非常に完全性の高いゲノムの再構築に成功し、未知アーキアの新生物機能の一端に迫るなど順調に成果を挙げている。
今後は、これまでに獲得した未知アーキア・未知バクテリアのゲノム情報を詳細に解析し、その基幹代謝情報を推定するとともに、未知アーキア・バクテリアが安定して豊富に存在する地下環境から集積培養化・純粋培養化に挑戦する。既に、一部集積培養化に至っているものがあるので、その安定維持法を確立できれば、その集積培養系を用いて、未知アーキア・バクテリアの機能を詳細に解析できるものと考えている。
これまで複数の陸域地下圏環境を対象として未知アーキアならびに未知バクテリアの実態解明に取組んでいるが、想像以上に、複数の環境で未知アーキアあるいは未知バクテリアが安定して存在していることが判明したため、多種類の未知アーキア・未知バクテリアを対象としてゲノム解析ならびに集積培養を行う必要があり、経費の増額が見込まれるため。
未知アーキア・バクテリアが安定して存在する地下圏環境からサンプルを採取し、分子生態学的解析・地化学的分析を行うとともに、複数種の未知アーキア・未知バクテリアの高精度なゲノム解析ならびに集積培養にかかる経費として使用する予定である。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 査読あり 7件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Microbes Environ.
巻: 31 ページ: 194-198
10.1264/jsme2.ME16013
Genome Announcements
巻: 4 ページ: e0047-16
10.1128/genomeA.00047-16
巻: 4 ページ: e00199-16
10.1128/genomeA.00199-16
The Chemical Times
巻: 239 ページ: 26-31
Int. J. Syst. Evol. Microbiol.
巻: - ページ: -
巻: 65 ページ: 1749-1754
Scientific Reports
巻: 5 ページ: 11857