研究課題
細胞を構成する生体分子を一から組み立てることによる生命の再構成は生命科学および合成生物学における究極の目標の一つであるといえる。生体分子の組み合わせによる生命の再構成を達成するためには、タンパク質を生産する手段そのものを自己複製可能な形で再構成することが不可欠であると考えられ、本研究ではタンパク質合成に関わる個々の因子から構成される再構成型無細胞タンパク質合成システム、PURE systemを自己複製可能な反応系へと改良することを目的とし、リボソームの再構成・tRNAの再構成・マイクロ流路におけるタンパク質合成の再構成の3点について研究開発を行っている。本年度は、リボソームの再構成状態を定量的に評価するための評価系として、PURE systemによって合成された安定同位体標識ペプチドを利用したタンパク質の絶対定量法を確立し、これをリボソームの再構成状態の評価に応用するための基盤整備を行った。また、ブルーストリパノソーマ由来のタンパク質のみで形成されるtRNAプロセシング酵素(PRORP1およびPRORP2)を取得し、通常ではRNAおよびタンパク質からなる複合体RNasePによって行われるtRNAのプロセシングをタンパク質のみで行うことが可能となった。さらに、ガラス基板上に構築されたマイクロ流路上にDNAを固定化した状態でのタンパク質合成を試み、緑色蛍光タンパク質GFP合成の観察と合成の最適化を行った。本年度によって得られた成果は、次年度以降におけるリボソーム再構成の評価、再構成されたtRNAによるタンパク質合成効率の向上、マイクロ流路を細胞に見立てたPURE systemの自己複製研究に応用する。
2: おおむね順調に進展している
当初計画に記載したように、リボソームの再構成、tRNAの再構成、マイクロ流路におけるタンパク質合成の確立にむけた研究開発を順調に行っている。
リボソーム再構成、tRNAの再構成、マイクロ流路におけるタンパク質合成、いずれにおいても、効率を向上させることが課題であるため、効率化に重点を置いた研究開発に取り組んでいきたいと考えている。
計画は順調に進んでいるが、研究室の移転にともない新たに計測機器を購入する必要があったため、人件費・謝金として計上した経費を物品費として計上し、研究予算に誤差が生じたため。
次年度に大腸菌ライブラリーを用いた大規模スクリーニングを行なう予定のため、次年度使用額として翌年度分の研究費と合わせて当初予定より入念なスクリーニングを行なう予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
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