研究課題/領域番号 |
26711001
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川島 茂裕 東京大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (40508115)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 染色体 / シュゴシン / リン酸化 / マロニル化 |
研究実績の概要 |
本研究では、リン酸化および脱リン酸化酵素によるシュゴシンのセントロメア局在化機構を明らかにし、真核生物が染色体分配を正確に行う仕組みを理解することを目的とする。本研究では、(1)Bub1キナーゼによるヒストンH2Aのリン酸化(Bub1経路)、(2)未知のキナーゼによるSgo2のリン酸化(Sgo2経路)、および(3)Cdc2キナーゼとDis2ホスファターゼによる未知の基質のリン酸化(CDK-PP1経路)の3つの制御機構を想定して研究を行っている。平成27年度は、特にBub1経路について重点的に研究を行なった。近年、質量分析技術の発展により、ヒストンにはこれまで考えられていた以上に様々な翻訳後修飾を受けている事が明らかになり、興味深いことに出芽酵母のヒストンH2Aは119番目のリジンにマロニル化修飾を受けている事が報告されている。しかし、その機能については不明であった。私は出芽酵母および分裂酵母において、ヒストンH2Aは119番目のリジンをマロニル化を模倣しうるアミノ酸であるアスパラギン酸およびグルタミン酸に置換した変異体を作製したところ、いずれの酵母においても、変異体においてシュゴシンの染色体局在が減少していることを見いだした。一方で119番目のリジンをアルギニンに置換した変異体ではシュゴシンの染色体局在の減少は見られなかった。これら結果は、ヒストンH2Aのマロニル化がシュゴシンの染色体局在を負に制御していることを示唆している。Bub1キナーゼが近傍の121番目のセリンをリン酸化することから、ヒストンH2Aの119番目のリジンのマロニルは、Bub1キナーゼによるヒストンH2Aのリン酸化を阻害しているというモデルが有力であると考えて、現在、この分子機構について解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究目的である3つのリン酸化制御の理解に向けて、平成27年度は、特にBub1経路について重点的に研究を行なった結果、ヒストンマロニル化がBub1キナーゼによるヒストンH2Aのリン酸化を介したシュゴシンの染色体局在を負に制御しているという新しい分子機構を見いだしたことから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ヒストンマロニル化がどのようにBub1キナーゼによるヒストンH2Aのリン酸化を介したシュゴシンの染色体局在を負に制御しているについて、その分子機構の解明を目指す。Bub1キナーゼが近傍の121番目のセリンをリン酸化することから、ヒストンH2Aの119番目のリジンのマロニルは、(1)Bub1キナーゼによるヒストンH2Aのリン酸化を阻害している、または(2)Bub1キナーゼによってリン酸化されたヒストンH2Aにシュゴシンが結合できなくなる、という2つのモデルが考えられる。この2つモデルを検証するため、ヒストンH2Aの119番目のリジンまたはマロニル化リジンを含むペプチドを合成し、Bub1キナーゼによるリン酸化の効率を調べる。リン酸化が減少した場合、(1)のモデルが確からしいので、次に119番目のリジンのマロニル化がBub1によるヒストンH2Aの認識を阻害している可能性を検証する。リン酸化が減少しなかった場合、(2)のモデルが確からしいので、119番目のリジンのマロニル化がシュゴシンとヒストンH2Aの相互作用を阻害している可能性を検証する。また、他の2つの経路(Sgo2経路とCDK-PP1経路)についても引き続き解析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗において予想外の発見があり、使用する予定であった物品費、旅費、人件費:謝金の額が当初の予定と変わったため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究の効率的な進捗のため、研究員または技術補佐員のための人件費・謝金として主に使用する予定である。
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