生命の根幹である物質不均衡を形成する能動輸送体の中でも、ヒト組織において最大のカチオン濃度勾配を達成することができる胃プロトンポンプを研究対象とした。この分子の作動機構理解の為、反応中間体の構造を明らかにすること、得られた構造情報を検証する為の変異体発現系およびクリーンバイオケミストリーを実践する為の精製系の確立を目指した。 電子線結晶学により、E2P状態におけるいくつかのsub-stateの構造解析に成功し、胃内腔へ向けたプロトンの排出及びカリウムイオンの取り込みに必要なゲーティングの為の構造変化を理解した(2014 J. Biol. Chem.)。 また、胃酸抑制剤のプロトタイプ化合物が結合した構造を以前より高い分解能(6.5Å)で解析した。この構造から得られた情報に基づいた変異体の解析により、胃酸抑制剤との相互作用に重要なアミノ酸を同定した(論文投稿中)。 さらに、本研究課題で確立した動物細胞による大量発現精製系の確立に成功し、高分解能構造解析への見通しが立ったので、研究最終年度の前年度において他の研究課題に切り替えて研究を推進する。
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