研究課題/領域番号 |
26711008
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石北 央 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (00508111)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 光化学系II / プロトン移動 |
研究実績の概要 |
2011年にX線結晶構造解析にPSII蛋白質の構造、さらにMn4Caクラスターの詳細分子構造が1.9Åの分解能で初めて明らかとなった [Umena et al. (2011) Nature 473, 55]。この分子構造の解明は、PSII水分解反応機構解明において極めて重要なステップである。一方で、肝心の水分解反応機構の全容が解明されるまでには至っていない。特に問題なのは、基質となる水分子が、結晶構造中のどの酸素原子であるのかという極めて基本的なことが明らかになっていないことである。(一般に、蛋白質における酵素反応解析とは、基質が結合サイト近傍の蛋白質環境によってどのように相互作用していくかを明らかにする作業である。)その主要因の一つは、結晶構造のMn4Ca近傍には多くの水分子があり、基質となる水分子を構造を見ただけでは同定できないことにある。厄介なことに「基質の水は反応の初期段階でMn4Caに取り込まれている」可能性も指摘されている。例えば、Mn4Caクラスター内部でMnと架橋している酸素原子が基質の水である可能性も否定できない。このように、「基質の水分子」が同定できていないことが、PSII水分解反応機構の解明の大きな妨げとなっており、基質水分子の同定が急務である。そこで、本研究ではPSII結晶構造内での水素結合パターンの決定をQM/MM法(2013年ノーベル化学賞受賞対象となった手法の一つ)で解析した。X線結晶構造解析では水素原子は見えておらず、水素原子が見えない。そこで、まず妥当な水素原子の位置および水素結合パターンを決定した。その後、プロトン移動経路の候補となる部位の水素結合において、水素結合エネルギーのポテンシャルを計算した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Mn4CaO5錯体近傍に存在する水素結合の水素結合ポテンシャルを解析することにより、プロトン移動経路となる候補を絞った。現在論文執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
水素結合のポテンシャルだけでなく、解離性アミノ酸・水の解離度・pKaの算出を静電相互作用計算(Poisson-Boltzmann方程式に基づく)を実行することでPSII蛋白質内の解離性残基のpKaを算出する。これにより、本研究によって得られたプロトン移動経路の妥当性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
・物品費¥633 補助金の残金不足による超過分 ・その他¥82,080 データ型通信カードの継続期間が年度をまたぐ為
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次年度使用額の使用計画 |
データ型通信カードは、年度をまたいで利用予定
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