研究課題
細胞分裂時に働く力は、細胞の運命決定、組織の形態形成など生物の形作りに必須の役割を果たすことが分子細胞生物学的観点から示唆されてきた。しかしながら、その力を直接操作して検証した実験の報告はない。本研究では、初期胚の胚全体もしくは特定の細胞の細胞分裂期を顕微力学操作によって制御し、形態形成への力の影響を定量化し、それに関わる主要な遺伝子の動態変調を時空間的に解析する。本研究の目的は、力学的環境の擾乱に対して、発生機構が備えるメカノケミカル制御・応答機構を顕在化し、プログラム化された機能遺伝子に支配される初期発生過程における“細胞分裂を制御する力”の役割を明らかにすることにある。以下に、得られた成果を箇条書きにする。1.導入したクラゲのメス個体において、トランスクリプトーム解析を行った。得られた結果から、卵成熟誘起ホルモンの遺伝子探索と、変態誘導物質の遺伝子探索を行った。候補となった遺伝子群については、人工ペプチドを合成し、その効果を解析した。その結果、変態誘導物質の遺伝子は決定できたものの、卵成熟誘起ホルモンに関しては、効果的な遺伝子の決定には至らなかった。2.昨年度、細胞分裂後期進行の速度は、特定のカンチレバーの硬さに強く依存していることを明らかにした。本年度は、細胞分裂後期進行を遅延させるカンチレバーの硬さと、それを感受していると推測されるアクトミオシン活性との関係を定量した。3. 中期紡錘体の形状は、赤道面を挟んで左右対称である。我々は、左右両極の形状のみならず、紡錘体極の力学特性も左右でほぼ等しいことを明らかにした。その形状と力学特性の左右対称を維持する機構を明らかにするため、顕微操作を用いて片側の紡錘体極を変形すると、もう片側の紡錘体極も自発的に同様な変形を示すことが分かった。また、この力学応答性に積極的に関わる分子モーターの寄与も明らかにした。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Molecular Crystals and Liquid Crystals
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Reproductive and Developmental Strategies: the Continuity of Life
Biophysics and Physicobiology
巻: 144 ページ: 1-11
10.2142/biophysico.14.0_1