研究課題/領域番号 |
26711014
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
今井 薫 (佐藤薫) 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (00447921)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 転写制御 |
研究実績の概要 |
これまでの研究で、胚発生の時期に発現する調節遺伝子を含むマイクロシンテニーに注目し、時空間的な発現パターンの解析をおこない、マイクロシンテニー内の遺伝子の特徴づけをおこなった。その結果左右相称動物で保存されているマイクロシンテニー(そのうちホヤにも存在するマイクロシンテニー)のうち30個についてホヤの胚発生期における遺伝子発現を解析したところ、22個は胚発生の時期に発現が見られた。そのすべての例でマイクロシンテニー内の遺伝子は同じ時期に同じ細胞・組織に発現していなかった。このうちの1つのマイクロシンテニーに注目して解析を進めている。このマイクロシンテニー含まれる2つの遺伝子は、隣り合う細胞で空間的に相補的な発現パターンを示す。この2つの遺伝子にまたがるゲノム領域を単離し、それぞれの遺伝子をGEPとRFPレポーター遺伝子に置き換えたコンストラクトを作成し、レポーター解析を行った結果、片方、あるいは両方の遺伝子の発現に必要なゲノム領域が明らかになった。さらに詳しい解析の結果、一方の遺伝子のプロモーターはもう一方の遺伝子のプロモーターと入れ替えると発現しないことが明らかになった。このことはプロモーターとエンハンサーと相性があり、このことが隣り合った遺伝子のエンハンサーが隣接していても特定のプロモーターとしか相互作用しない理由であると考えらえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1つのマイクロシンテニーに注目して、レポーター解析を行った結果、片方、あるいは両方の遺伝子の発現に必要なゲノム領域が明らかになった。さらに詳しい解析の結果、一方の遺伝子のプロモーターはもう一方の遺伝子のプロモーターと入れ替えると発現しないことが明らかになった。当初はあまり計画になかったが、プロモーターとエンハンサーの相性という観点からマイクロシンテニー内の遺伝子が同じ時期同じ組織で発現しない仕組みを解明できる可能性が示せた。
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今後の研究の推進方策 |
1つのマイクロシンテニーに注目して解析を進めている。このマイクロシンテニー含まれる2つの遺伝子は、隣り合う細胞で空間的に相補的な発現パターンを示す。昨年度に引き続き、このマイクロシンテニー内の2つの遺伝子の転写制御のメカニズムを明らかにすべく、詳しい遺伝子のエンハンサー解析を進めていく。それぞれの遺伝子をGEPとRFPレポーター遺伝子に置き換えたコンストラクトを作成し、レポーター解析を行った結果、片方、あるいは両方の遺伝子の発現に必要なゲノム領域が明らかになった。研究実績の概要で述べたように、解析の結果、一方の遺伝子のプロモーターはもう一方の遺伝子のプロモーターと入れ替えると発現しないことが明らかになってきた。このことはプロモーターとエンハンサーと相性があり、このことが隣り合った遺伝子のエンハンサーが隣接していても特定のプロモーターとしか相互作用しない理由であると考えらえる。今年度はプロモーターとエンハンサーとの相性に着目してエンハンサーが選択的にプロモーターと結合する仕組みの分子的なメカニズムを解明したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初はマイクロシンテニーが進化の過程で保存されてきた仕組みをさぐるために複数のマイクロシンテニーを対象に主にエンハンサー解析によってそれらの転写制御メカニズムを明らかにしようと試みていた。しかし29年度から少し異なる、エンハンサーとプロモーターの相性というアプローチで解析し始めたため29年度内に研究が終わらなかった。したがって30年度もこの方向で解析を進める予定である。
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