本年度は孔辺細胞におけるフォトトロピンシグナル伝達の初期過程の中でも、フォトトロピンのリン酸化基質であるBLUS1が細胞膜H+-ATPaseにシグナルを伝達する過程について重点的に解析を行った。BLUS1は孔辺細胞特異的に発現するSer/Thrプロテインキナーゼであり、下流の因子をリン酸化することでシグナルを伝達すると考えられる。そこで本研究ではBLUS1下流因子の同定を目的として、yeast two-hybridスクリーニングによりBLUS1と相互作用する因子の探索を行った。可溶性タンパク質であるBLUS1は細胞膜上でフォトトロピンと相互作用し、同じ膜上のH+-ATPaseを活性化させることから、BLUS1の標的因子は膜タンパク質あるいは膜結合性タンパク質である可能性が考えられた。そこで本研究では核内におけるタンパク質相互作用を検出するGAL4システムに加え、膜上でのタンパク質相互作用の検出が可能なスプリット・ユビキチン法を用いた相互作用因子の探索を行った。また、結合因子は孔辺細胞特異的に発現する可能性が考えられたため、cDNAライブラリーには市販のシロイヌナズナの芽生え由来のものに加え、独自に作製した孔辺細胞プロトプラスト由来のものを併用した。これらのスクリーニングから、現在までに複数の結合因子が単離され、これらの中には機能未知のプロテインキナーゼが含まれていた。このキナーゼは孔辺細胞プロトプラストにおけるBLUS1共同免疫沈降産物の解析においても検出されたことから、BLUS1下流のシグナル伝達に関わる可能性が示唆された。
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