研究課題
アカトンボ(トンボ科アカネ属)は、日本のトンボの中で桁違いに種数が多く、体色や斑紋に著しい多様性がある。昨年度までに、アキアカネでは色覚に関わるオプシン遺伝子が20種類も存在すること、トンボの種間でオプシン遺伝子に著しい多様性が存在することが確認された。2016年度は体色に関連する遺伝子をRNAseqで網羅的に解析したところ、アカトンボに近縁なチョウトンボにおいて、翅色多型と強い相関のある遺伝子を1種類同定することに成功した。そこで、先進ゲノム支援課題に申請を行い、チョウトンボの翅色多型間でゲノム配列の解析を進めた結果、この遺伝子は特定の翅色型のゲノムにのみ存在することが明らかになった。一方で、トンボでは遺伝子の機能解析系が報告されていなかったが、予備的にRNAiを試みたところ、siRNAやdsRNAの投与のみではほとんど影響が見られないことが確認された。そこで、最近チョウ目昆虫で開発されたエレクトロポレーション法を併用する系を、ハッチョウトンボを用いて着色に関わるlaccase2遺伝子をターゲットに試みたところ、局所的に着色阻害が生じることが確認され、エレクトロポレーションを併用することでトンボでもRNAiによる機能阻害が可能であることを見出し、論文発表を行った(Okude et al., 2017)この手法を用いて、今回得られた翅色多型の候補遺伝子の機能阻害を行ったところ、翅色と斑紋パターンに影響が見られたことから、この遺伝子が翅色多型の直接の原因遺伝子であることが示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
トンボの体色多型に関して、RNAseqおよびゲノム解析から、当初の予想を上回り、原因遺伝子をほぼ特定することに成功した。また色覚の多様性に関しても、ゲノム解析によって遺伝子クラスター構造が明らかになるなど、非常に順調に解析が進んでいる。
今年度は、翅色多型のゲノム構造(まだ完全につながっていない)をPCR等で確認・改訂するとともに、成果の論文化を目指す。
昨年度はチョウトンボのゲノム解析を、先進ゲノム支援のサポートのもと、中心的に進めた結果、当初予想していたRNAseq解析などを今年度行うことに変更した。
昨年度から持ち越しとなった遺伝子解析用の費用にあてる予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 3件、 招待講演 7件) 図書 (1件)
Applied Entomology and Zoology
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
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生物資源ゲノム解析拠点ニュースレター2017
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