研究課題/領域番号 |
26711021
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
二橋 亮 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ付 (50549889)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | トンボ / 色覚 / 体色変化 / 体色多型 |
研究実績の概要 |
アカトンボ(トンボ科アカネ属)は、日本のトンボの中で桁違いに種数が多く、体色や斑紋に著しい多様性がある。昨年度までに、トンボは色覚に関わるオプシン遺伝子が著しく多様化していることや、アカトンボに近縁なチョウトンボで、翅色多型と強い相関がみられる遺伝子を発見していた。2017年度は、2016年度に引き続き先進ゲノム支援課題に申請を行い、 追加で2個体のゲノム解析を行った。さらに、複数個体で原因遺伝子周辺の遺伝子解析を行った。その結果、原因遺伝子座には、相同染色体間に著しい多型が存在することが確認された。さらに、幼虫および成虫の各組織からRNAを抽出して網羅的な遺伝子発現解析を行った結果、翅色多型の原因遺伝子は、幼虫、成虫を通して翅特異的に発現することが確認された。この遺伝子の有無を他のトンボ類でも網羅的に調査した結果、近縁種のベッコウチョウトンボに存在することが確認され、興味深いことにこの種では斑紋多型には関与していないことが示唆された。また、翅色形成に関わる分子基盤を網羅的に調べた結果、翅の斑紋と強い相関の見られる色素合成遺伝子や機能未知遺伝子が複数確認された。さらに、色覚に関わるオプシン遺伝子が、幼虫から成虫にかけての変態に伴い、段階的に発現が変化することが確認された。アカネ属の中には、翅に顕著な斑紋が見られる種がいるが、同様に模様ごとにRNAseq解析を行った結果、斑紋と強い相関のある遺伝子を複数見出すことに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
トンボの体色多型について、比較ゲノム解析から、原因遺伝子が想像以上に複雑な遺伝子構造をとっていることが明らかになった。また大規模なRNAseq解析から、時期・組織・斑紋特異的な遺伝子を多数同定することに成功したなど、非常に順調に解析が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
翅色多型のゲノム構造が予想以上に多様であったため、今年度はその全容を解明するとともに論文化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究を進める過程で、チョウトンボの翅色多型の原因遺伝子の同定につながる期待以上の発見があった。今年度の解析から少なくとも関東地方の個体群においては100%の相関がみられたが、論文化に向けて結果をより詳細に解析するため、他の地域のサンプリングと解析を予定しており、1年間の期間延長を申請して次年度への繰り越しを行った。
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