研究課題/領域番号 |
26711024
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
細 将貴 京都大学, 学内共同利用施設等, 助教 (80557695)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 種分化 / 系統地理 |
研究実績の概要 |
本研究は、適応と生殖隔離の両方に作用する「魔法形質」としてすぐれて単純な機構であるカタツムリの巻型の進化を、行動生態学的アプローチと分子生態学的アプローチの両面から深く追究することを目的とする。これまでに台湾南東部において広域の細密サンプリングを実施して十分な地点数・個体数の試料を得ることに成功し、各集団の分布域の確定と大規模データに基づく予備的な系統地理学的解析をおこなうことができた。その結果、当初想定 していた以上に明瞭な集団間の分化や種の多系統性があきらかになった。今後は、わずかに残る不明瞭な分布境界を確定していくとともに、多くの試料を用いた、より完成度の高い系統地理学的解析をおこなっていく予定である。また、安定的な飼育を可能にする設備を開発し、未成熟個体を飼育下で成熟させ、集団間・種間での交配実験をひろい組み合わせで予備的におこなうことができた。その結果、やはり想定外の生物学的種の境界があきらかになりつつある。今後、交配実験を完遂し、各形質と遺伝的分化が生殖隔離にどのように効いているのかをあきらかにしていく必要がある。なお、一地点で採集された右巻き種と左巻き種を用いて安定同位体解析を行なったが、その結果、種内の変異が大きく、明瞭な分化が見られないことがわかった。安定同位体解析によって共存する種間の生態的分化を実証するのは、この研究対象においては困難と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに採集した試料に対し、一集団につき一個体を用いてMIG-seqを予備的に実施した。MIG-seqは、PCRベースで多数の遺伝子座を増幅し、次世代シーケンサーを用いて多型サイトを大量に得る比較的安価な手法である。これにより、本研究で対象とする種群の集団構造の全体像が、非常に高い確度であきらかになった。結果として、本計画が仮定していた進化プロセスはますます尤もらしいということが確認され、また、今後優先的に解析に追加するべき集団も判明した。特に、ある右巻き種と左巻き種のペアが極端に近縁であることが明らかになったのは大きな前進である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに採集した全約1500サンプルを対象にMIG-seqを実施し、集団構造をより詳細にあきらかにする。これによって有望とみなされた一部の集団に対してはRAD-seqを実施し、巻き方向に関わる遺伝子座の候補を関連解析によって絞り込む。また、ゲノム支援によって現在アセンブル中の全ゲノム配列にRADマーカーを貼り付け、候補遺伝子周辺に実際に存在する遺伝子の機能をリストアップする。これによってさらに絞り込むことのできた候補遺伝子をモノアラガイにおいてRNAiでノックダウンし、機能を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
そもそもが基金分を最終年度に使用する予定だったため。
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次年度使用額の使用計画 |
RAD-seq等、大規模に実施する予定の分子実験のために使用する。
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