[野外調査] 調査密度の低かった2地域において調査を実施し、本研究課題で対象としたSatsuma属カタツムリ約12系統群の分布境界をほぼ確定した。これにより、1.右巻きの系統に関しては一地点たりとも複数系統が共存することがないこと、2.左巻きの系統に関しては2つの系統がしばしば共存することがあきらかになった。また非常に興味深いことに、3.右巻きの系統と左巻きの系統が地理的な障壁に隔てられることなく分布を接している、またはわずかに共存している地点が複数あることが判明した。これらに関しては、いずれも巻型を除いて形態が酷似していること、遺伝的に極めて近縁であることが確認できた。よって、ごく最近に一方の個体群で逆巻きアリルが固定したものの生態的に分化できておらず、安定的な共存が成立していない可能性が考えられた。共存のパターンにこのようなバリエーションが見つかったことは予想外の収穫であり、今後の解析を一段と深いものにできると考えられた。 [分子実験] 台湾において研究課題開始時より3年間にわたって採集してきたSatsuma属カタツムリのサンプルの大部分(約1500サンプル)についてMIG-seqを実施した。現在、チェリーピッキングを起こさぬようデータを一括して解析を進めている。
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