適応と生殖隔離の両方に同時に影響する形質である「魔法形質」は、すぐれて単純な種分化の機構として知られている。そのなかでも「カタツムリの巻型」は、形質状態がひとつの遺伝子で決定されるという点において特異な利点を持つ。本研究課題は、台湾東南部に分布するSatsuma属カタツムリの左巻き種群を対象に、巻型の進化過程を生態調査、系統地理学的解析、および交配実験によってあきらかにし、その結果をもとに巻型遺伝子を特定することを目的として実施された。その結果、当初の予想を上回る複雑な進化史が示唆され、遺伝子の特定には至らなかったものの、それらが同一の遺伝子により平行的に起源したという作業仮説は支持された。
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