研究課題
テングザルは、単雄群を社会の基本単位とするが、他の多くの種の単雄群で見られる子殺しが見られず、また単雄群間の敵対的交渉も少ない。申請者はこの傾向を説明するものとして、テングザルが父系的基盤をもつ重層社会を形成し、そのため雄間の血縁度が高くなっているという仮説を立てて研究を継続してきた。動物園のテングザルの糞を用いて開発した遺伝子マーカーを用い、約300個以上の野生テングザルの糞から遺伝子実験を行った。実験はおおむね成功し、血縁度解析に必要となるデータを十分に得ることが出来た。特に、雄グループの血縁度データも十分に集まったことから、今まで謎に包まれていた雄グループ内の血縁度が明らかになってきた。一見すると平和的なテングザルの重層社会が、実は強い雄間の競争によって進化した可能性があることにも言及することができたことは大きな成果であった。長期における個体識別された群れ構成データ、テングザルの形態学的データ、音響データなどをもとに、テングザルの性的二型の進化を考察する中で、特に雄の鼻の肥大化には、重層社会ゆえの雄間競争の強さが関係することが明らかとなった。テングザルの雄の鼻の特殊化は、雄の強さの象徴であり、雄間競争の激しい社会でくらすテングザルの雄間における、無駄な争いを避ける社会的なメカニズムと関連していることが示唆できた。つまり、テングザルの比較的平和に見える重層社会の内部構造には、潜在的な雄間競争が存在することを明確にすることができた。社会生態、形態、音響、そして遺伝学的な結果を包括的に分析していくことで、重層社会解明の新たな可能性を示すことが出来た。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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