研究課題
イネの収量性に大きく影響すると推察される葉身の形態に着目し形質調査を行った。イネ品種「ひとめぼれ」と多様なイネ系統を交配した22組合せ3,078系統を圃場で栽培し、出穂期、葉身形態(長さ、幅)、クロロフィル含量と相関のあるSPAD値の形質データを得た。この内、ゲノムワイドな1,015個のSNPマーカーでジェノタイピングが終了した18組合せ2,026系統を用いて、アソシエーション解析を試みた。2,026系統に集団構造があるかみるため、ジェノタイプデータを基に主座標解析を行ったところ、明確な集団構造は示されなかった。このことから、育成した系統群は、集団構造をキャンセルして統計的パワーを上げるというNested Association Mappingの理論に適合していると考えられる。SNPジェノタイプ型と形質値のアソシエーション解析として、1.線形モデル、2.集団構造を考慮した線形モデルの2つのモデルを検討した結果、どちらのモデルでも得られるP値のピークはほぼ同じであり、単純な線形モデルでの解析が十分可能であると推察された。 葉身の長さでは4カ所、葉身の幅では4カ所、SPAD値では3カ所の有意な領域を同定した。この内、葉身の幅の1箇所は、既知の遺伝子NAL1(Narrow leaf 1)であると推察された。また、大規模系統の圃場での形質調査を可能とするため、バーコードを利用した形質調査システムを開発検証し、論文として報告した(Utsushi and Abe et al. Breed. Sci. in press)。
2: おおむね順調に進展している
大規模な圃場での形質調査を実施し、目的通り葉身形態に関する形質データが得られている。アソシエーション解析も2つのモデルを検討し、形質と連関のあるSNPがいくつか検出できている。
形質データの年次変動を確認するため、同様の圃場栽培・調査を行う。22組合せの親系統の全ゲノム配列の構築を完了させる。次世代シーケンサーによるシーケンスは完了し、現在はin silico解析を実施している。これら親系統の全ゲノム配列および「ひとめぼれ」の全ゲノム配列を用いて、SNPジェノタイプから推定した3,078系統の仮想全ゲノム配列を構築し、これを用いた精度の高いアソシエーション解析を試行する。これによって検出したQTLの原因遺伝子同定を進める。
シーケンスの外注等を検討していたが、機関に新たに整備された機器での解析を行ったため、進捗に若干の遅れが生じたため。
シーケンス試薬の購入費、研究を迅速に進めるため研究補助者を雇用する人件費として使用する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Breeding Science
巻: 65 ページ: 1-5
10.1270/jsbbs.65.1