研究課題/領域番号 |
26712003
|
研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
持田 恵一 独立行政法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 副チームリーダー (90387960)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 倍数性進化 / コムギ / ゲノム |
研究実績の概要 |
本研究では、コムギのAゲノム野生種(AA)、パンコムギ(AABBDD)、Aゲノム栽培種(AmAm)のAゲノム同士を比較することにより、Aゲノムに注目してコムギの倍数性進化過程を再構築することを目的とする。倍数化を経験したパンコムギのAゲノムと2倍体のまま栽培化したAゲノムは、それぞれどのような「らしさ」を得たかを明らかにする。 平成26年度は、ゲノム構造における進化過程の再構築に取り組んだ。具体的には、Aゲノム祖先種(T. urartu; AuAu)、パンコムギ(T. aestivum; AABBDD)、Aゲノム栽培種(T. monococcum; AmAm)それぞれのAゲノム遺伝子領域についての比較ゲノム解析を進めた。申請者が整備したTriFLDBに収録したコムギ完全長cDNAと、近縁イネ科植物のブラキポディウムやイネ、オオムギなどの完全長cDNAや、コムギのRNA-seqデータを用いて遺伝子構造に関する精密なアノテーションの作成を行い、Aゲノム祖先種、パンコムギ、Aゲノム栽培種間での同祖遺伝子座の比較を可能にするための情報を整理している。 また、Aゲノム遺伝子アノテーションから同祖遺伝子毎(Au-Am-A)のセットを作成する。同祖遺伝子セットを作成するために、MCL法による相同遺伝子のクラスタリングを行った。このクラスタリングでは、コムギ属植物の同祖遺伝子セットを約25000種に分類した。既存の遺伝子構造アノテーションに基づく解析では非完全長の遺伝子セットや、転写が確認されていない配列も多く含まれており、完全長cDNAやRNA-seqデータに基づく遺伝子構造の再構築が必要であった。そこで、公共データベースから500以上のRNA-seqデータセットを取得し、それらのゲノムマッピングによる遺伝子構造予測を始めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画では、平成27年度の計画は、(1)ゲノム構造における進化過程の再構築と(2)トランスクフリプトームにおける進化過程の再構築 である。(1)における遺伝子構造予測に予定より時間を要したため、(2)の進捗がやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、研究計画における(2)トランスクフリプトームにおける進化過程の再構築および(3)エピゲノム修飾様式における進化過程の再構築に取り組む。
(2)トランスクフリプトームにおける進化過程の再構築では、RNA-seqデータを用いて、遺伝子発現パターンの変化を同祖遺伝子毎(Au-Am-A)に明らかにする。統計モデルを用いて同祖遺伝子間で発現パターンが異なっているかどうかを計算機的に推定する。また、異なり方の程度を分類し、「特定の組織で発現する遺伝子群」「特定の細胞機能に関わる遺伝子群」「non-coding RNA遺伝子群」など、さまざまなコンテクストにおける遺伝子発現パターンの進化とその影響範囲を明らかにする。 (3)エピゲノム修飾様式における進化過程の再構築ではRNA-seqの組織と同じ組織からゲノムDNAを抽出してメチローム解析を行い、Aゲノムの遺伝子領域のメチル化様式を比較する。コムギはゲノムサイズが大きいので、抗メチル化シトシン抗体を用いて免疫沈降を行い、メチル化DNA領域を濃縮して解析する。メチル化DNAを解読する。メチロームにおいてどのような変化がAu→AmとAu→Aの過程で生じたかをゲノムワイドに明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
購入物品に想定外の値引きがあり、少額の次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
物品費の一部として、消耗品の購入に充てる。
|