研究課題/領域番号 |
26712005
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
赤木 剛士 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50611919)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | カキ / 果実 / 形状多様性 / 成熟多様性 / 全ゲノム情報 / ゲノム進化 / トランスクリプトーム |
研究実績の概要 |
平成28年度においては主に、ドラフトゲノム情報の構築と、果実形状多様性のプログラムおよび全ゲノムワイドデータとの相関解析の検討、そしてカキ品種間の遺伝的多様性度解析の検討を行った。ここでは、以上の三点について、個別にその概要を記述する。 カキ属野生二倍体種マメガキ(D. lotus)におけるPacidicBioシークエンス解析より、最終的にゲノム量の60倍の情報を収集し、Falconアセンブラーを用いることによって、ゲノム量のおよそ87-90%程度をカバーするコンティグ群を構築できた。N50値は1Mbを超えており、質の高いドラフトゲノム情報を構築できたと考えられた。さらに、マメガキ分離交雑集団270系統からGenotyping by sequencing(GBS)ライブラリを構築しており、現在、遺伝的アンカリングのための解析を行っている。 果実形状に関しては、形状解析プログラム「SHAPE」を用いることにより、果実横断・縦断面の楕円フーリエ記述子変換に基づく主成分分析によって、カキ品種間の形状多様性の数値化が可能なことが示唆された。今年度は限定された品種のみにおけるデータであるが、形状多様性とトランスクリプトームデータの相関解析から、果実サイズに関与する可能性の考えられるいくつかの候補遺伝子も同定された。 カキ品種はその由来が古く、ゲノムシークエンスの多様性度とその高次倍数性から、GBSによる解析は難しいことが示唆された。一方、トランスクリプトーム解析から得られた有意発現遺伝子よりcapture法に基づくエクソーム解析が有効であることが示唆され、captureプローブをデザインするとともに、倍数体における量的遺伝子型決定法の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カキ属ドラフトゲノム情報公開のめどが立ち、遺伝的・物理的アンカリングについても検討が十分になされた。今後の進化学的アプローチに用いるための多様性情報が不足しているが、平成28年度において多様な品種群を用いたゲノムワイドジェノタイピングとトランスクリプトーム解析を行うことを予定しているため、それらの解析中で補完できると考えられる。 課題の一つであったカキ果実の形状数値化についてSHAPEプログラムが適用可能であることが分かり、これとトランスクリプトーム解析を組み合わせることで有意な相関解析が行えることが示唆された。平成28-29年度の二年間において、170以上のカキ品種でこの相関解析を行うことは可能であると考えられる。 最終的にはカキ品種群において果実形状・成熟性に寄与を持つ遺伝因子の同定を目標としており、ここでの課題は六倍体である栽培ガキ品種におけるジェノタイピングであるが、captureプローブのデザインは終わっており、平成28年度においてこの検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
マメガキドラフトゲノム情報の整理に向けて、分離集団270系統におけるGBSによる遺伝的アンカリングとともに、新たに10X Genomics社のGem-Barcodeシステムに基づく物理的アンカリングを行う。マメガキゲノムは木本性に由来する高ヘテロ性とともに、反復配列を多く含む性染色体を有しており、ゲノム情報のハプロタイピング(phasing)が大きな課題となっており、物理的なアンカリングによるphasingによって、XY染色体を含むヘテロな状態のゲノム情報も整理することが可能であると考えられる。 果実の形状・成熟性については供試品種群を大きく拡張子、京都大学農学部附属京都農場植栽の170以上のカキ品種全てにおいてPHASEによる形状特性の継時的な数値化および軟化・エチレン生成に関する各パラメーターの収集を行う。これらの品種間差異と関連する遺伝子ネットワークを構築するために、品種間で最も形質多様性が得られた時点においてトランスクリプトーム解析を行い、ピアソン積率相関解析などを行う予定である。 ジェノタイピングツールの一つとしてCaptreシステムによる一種のエクソーム解析を実施する予定である。カキは六倍体であり、六本のアレルの組成を完全に把握するのが難しいが、Illumina HiSeqによる高カバレージデータ下におけるMAPS(Henry et al. 2014)の適用などによる量的アレルタイピングを行う予定である。さらに、優性モデルによる多型(SNPs)と形質間の単回帰による相関解析も検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
参照ゲノム情報となるマメガキのドラフトゲノムシークエンス解読が遅れていたため、その解析に使用する額が未使用である。ここでは、カキ品種170以上における大規模なジェノタイピングを当初は計画していたが、ようやく方法の検討と準備が整った状態であり、平成28年度において、この解析を実施する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
Capturedシステムによるカキ品種群のジェノタイピングと、新たに計画に加えたGem-barcode法によるマメガキドラフトゲノムの物理的アンカリングに多額の費用が必要であり、次年度使用額と平成28年度費用を一部足して、これらの解析を実施する。それ以外の計画については、特に変更はないため費用の負担も懸念されるが、経年とともにゲノムワイド解析費用が低下しているため調整は可能であると考えられる。
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