研究課題
土壌からの選択的な必須元素の吸収が植物を形作っている。選択的吸収を可能にしているのは、輸送体とカスパリー線である。本研究は、これまでに単離した複数のカスパリー線変異株の解析を通して、1.カスパリー線形成の分子機構を明らかにすること、2.カスパリー線を様々な細胞で形成・欠損させた植物を用いて、根の養分吸収における細胞壁構造の役割を明らかにすることを目的としている。本年度の概要を1と2に分けて以下に記述する。1.カスパリー線形成に関与するMYB転写因子について、異所的発現によりカスパリー線を内皮細胞以外に形成させること、ChIP-qPCRによりCASP1、ESB1、PER64のプロモーター領域にMYBが直接結合することを確認し、論文投稿を行った。また、下流の遺伝子についても2遺伝子についてはGFP融合タンパク質を作成し、内皮細胞特異的な発現を確認し、うち一遺伝子についてはカスパリー線形成位置への局在を確認した。これらの遺伝子について破壊株を作成し、カスパリー線パターンを確認したが、野生型株と変化がなかったため、現在、相同遺伝子と多重破壊株を作成している。2.アポプラストのカルシウム輸送を観察するために、組織特異的なプロモーターを用いて、アポプラストでエクオリン(カルシウム感受性発光タンパク質)を発現させる植物体を作成している。また、顕微鏡を用いて発光を観察する系を確立した。
2: おおむね順調に進展している
MYB転写因子がカスパリー線のマスターレギュレーターであることを示すことができた。一方で、MYBだけではアポプラストの障壁として機能するカスパリー線の形成には不十分であることが明らかとなった。このことは予想の範囲内であり、現在対策を講じている。エクオリン系統についても順調に作出が進んでいる。現在までに組織特異的な発現を確認しており、来年度以降の解析が順調に行える状況にある。
当初の計画と大きな変更はない。内皮細胞以外でカスパリー線を形成させることを目指す。MYBにより制御されていないカスパリー線関連遺伝子をMYBと同じ組織で共発現させることにより可能になると考えている。カルシウムイメージングについても確立した系統と変異株を掛け合わせる。
ChIP-qPCRの実験が当初予定していたよりも上手く行ったため、試薬代が予定額よりも低かったためである。
消耗品として使用する。
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eLife
巻: 3 ページ: -
10.7554/eLife.03115