研究課題
1.新規カスパリー線変異株についての解析を進めた。この変異株では、カスパリー線の形成異常とスベリンの過剰蓄積に加えて、カスパリー線形成に必要なCASP1の局在に異常を有する。遺伝子マッピングと次世代シークエンスを用いることにより、原因遺伝子を同定した。原因遺伝子は未知のタンパク質をコードし、RFPとの融合タンパク質を用いることにより、アポプラスト空間に局在することを明らかにした。また、この変異株は他のカスパリー線変異株と同様に地上部のイオノームのパターンに異常がある。変異株においてスベリン分解酵素を内皮細胞で特異的に発現させたところ、地上部のイオノームパターンが野生型株に近づいたことから、スベリンの過剰蓄積がイオノームの変化をもたらしていることを明らかにした。また、この変異株を解析する過程で、カスパリー線が寸断される側根発生部位においてスベリンがアポプラスト障壁として機能することを見出した。以上のことをまとめて、現在論文投稿中である。2.MYB36により制御される遺伝子群のうち、T-DNA破壊株が入手できない5つの遺伝子についてCRISPR-Cas系統を作成している。次年度は、この系統を用いて、カスパリー線の形成パターンとGFPの局在を観察することにより、各々の遺伝子の機能を明らかにする予定である。3.イネのCASP2遺伝子にTos17挿入された系統が地上部のイオノームパターンに異常を有することを見出した。シロイヌナズナの例とは異なり、明らかなカスパリー線異常やスベリンの過剰蓄積は今のところ観察されていない。現在、CRISPR-Cas系統を作成しており、CASP2がイオノームの変化をもたらしている遺伝子であることを確認する予定である。また、CASP2の遺伝子機能を明らかにするために、より詳細に根の観察、特にアポプラスト障壁の機能を観察する予定である。
2: おおむね順調に進展している
新規のカスパリー線形成に関与する遺伝子を同定した。この遺伝子は、カスパリー線形成のマスターレギュレーターであるMYB36の制御下には無い遺伝子であり、カスパリー線形成機構の新たな一面を明らかにする重要な遺伝子であると考えている。また、側根発生部位においてスベリンがカスパリー線の障壁としての機能を補完することを見出したことは、大きな成果である。
当初の計画と大きな変更はない。今年度同定した遺伝子の機能解析を進めていく。また、シロイヌナズナとは根の構造が異なるイネを用いて、カスパリー線の生理機能を明らかにしていく。
人件費を見込んでいたが、雇用していた博士研究員が予定よりも早く次のポジションがきまり、雇用する必要が無くなったため。
消耗品として利用する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件) 備考 (2件)
Plant Cell Physiol.
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1093/pcp/pcv196
Plant Soil
10.1007/s11104-016-2812-6
巻: 56 ページ: 1205-1214
10.1093/pcp/pcv047
J. Exp. Bot.
巻: 66 ページ: 3657-3667
10.1093/jxb/erv105
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.
巻: 112 ページ: 10533-10538
10.1073/pnas.1507691112
Soil Sci. Plant Nutr.
巻: 61 ページ: 951-956
10.1080/00380768.2015.1086277
http://www.u-tokyo.ac.jp/ja/utokyo-research/research-news/switch-for-building-barrier-in-roots.html
http://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/2015/20150701-2.html