研究実績の概要 |
全国40箇所の森林土壌中のカビ群集組成を解析した。具体的には土壌から抽出・精製したDNAに含まれるカビのITS領域遺伝子をPCR法により増幅したのち、ハイスループットシーケンサーを用いて各土壌から92000の塩基配列を得た。得られた塩基配列について97%以上の相同性を有する配列をひとつのOTU(Operational Taxonomic Unit, 種と同義)とした。昨年度に行ったバクテリア群集の解析ではバクテリア群集組成は土壌のpHに応じて変化したが、カビ群集に対するpHの影響は相対的に小さく、樹種の影響が見られた。マツ林、ブナ林、ミズナラ林では外生菌根菌が多く検出された一方で、スギやヒノキ林では存在量自体は非常に小さいながらもアーバスキュラー菌根菌がより多く検出される傾向が見られた。マツ、ブナ、ミズナラは外生菌根菌を、スギやヒノキはアーバスキュラー菌根菌を保持することが知られている。一昨年度に行った解析においてマツ林、ブナ林、ミズナラ林ではカビのバクテリアに対する相対存在量がスギやヒノキが優占する森林土壌に比べて大きいが示されているが、群集組成の結果からその原因が示された。 これまで得られた結果から、微生物の存在量と群集組成は異なる因子によって規定されており、また微生物の中でもバクテリア群集組成とカビ群集組成もまた異なる因子によって規定されていることが示唆された。特に窒素循環速度の観点からは各反応の基質の供給量とともにその反応を担う微生物群の存在量が重要であることが示された。
|