研究課題/領域番号 |
26712017
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研究機関 | 国立研究開発法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
伊藤 克敏 国立研究開発法人水産総合研究センター, その他部局等, 主任研究員 (80450782)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 有害化学物質 / バイオレメディエ-ション / 汚染耐性生物 / 海産ミミズ / アベハゼ / コノハエビ / アオサ |
研究実績の概要 |
昨年度の結果から、汚染耐性生物である海産ミミズ(Thalassodrilides sp.)、甲殻類コノハエビ(Nebalia bipes)及び魚類アベハゼ(Mugilogobius abei)は、多環芳香族炭化水素類(PAHs)の一つであるフェナントレン(Phe)に対して、他の生物に比べ高い耐性・削減能を有していることが明らかとなった。 本年度は、未だ沿岸域の底質から検出されるトリブチルスズ(TBT)に対する汚染耐性生物の有する分解能を、試験開始前の被験物質濃度及び、試験後の被験物質濃度を測定し、検討した。その結果、昨年度実施したPheの分解能はコノハエビ≒アベハゼ>海産ミミズの順で高かったが、TBTは海産ミミズ>コノハエビ>アベハゼの順で分解能が高く、化学物資の種類の違いにより、生物の有する分解能が異なることが明らかとなった。さらに、本年度は、最も分解が促進された有害化学物質であるPheを曝露した汚染耐性生物群から、遺伝子を抽出し、有害化学物質耐性・分解に関わる因子を網羅的に解析した。具体的には、魚類アベハゼ、甲殻類コノハエビ、及び藻類アオサをPheで曝露した個体及び、曝露していない個体から遺伝子をそれぞれ抽出し、次世代シーケンサー(Illumina HiSeq)で解析を行った。なお、アベハゼは肝臓を、コノハエビ及びアオサは全体をサンプルとし遺伝子の抽出を行った。各サンプルとも1.1億Readsを解析し、遺伝子ごとの発現量を算出し、検体間比較を行い、Phe曝露により発現量の変化する遺伝子を網羅的に明らかにした。遺伝子解析については、海産ミミズにおいて有害化学物質分解への関与の可能性が検出された薬物代謝酵素系を重点的に現在解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
27年度実施予定の実験について全て終了しているが、次世代シーケンサーを用いた、アベハゼ、コノハエビ、及びアオサの遺伝子発現量解析について、現時点でデータを精査しているため(2)おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
今後、次世代シーケンサーの結果を早急に精査し、化学物質分解に関与が予想される遺伝子を同定し、リアルタイムPCRを用いて、その発現量の挙動を観察する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究協力者としての契約職員の人件費を計上していたが、連携研究者とで実験の大部分を遂行すると共に、解析を委託することにより、契約職員の実務時間を削減することができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は、リアルタイムPCRを使用して、機能遺伝子の発現量変動を精査する予定であり、その際に使用するプライマー設計費の補填に使用する予定である。
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