沿岸域は本来、種々の海産生物の稚仔を育む場(ゆりかご)として、海洋生態学的にきわめて重要な役割を担う。しかしながら近年、有害化学物質による局所的な底質汚染が深刻な問題となっており、早急な環境修復技術の構築が求められている。これまでに、汚染底質に生息する海産ミミズがきわめて高い有害化学物質分解能を有することを発見し、他の汚染耐性生物にも同様の機能が備わっている可能性を指摘するに到った。本研究では、複数の汚染耐性生物の有害化学物質分解能を検討するとともに、種横断的な分解機構についてトランスクリプトーム解析等を用いた精査を行う。これにより、汚染耐性生物の底質浄化能を最大限活用した革新的な環境修復技術の構築を目指す。 本年度は、本年度は課題最終年度であり、これまで行ってきた実験結果の取りまとめを行うと共に、当初の計画に加え、複数種の汚染耐性生物の複合的な浄化能力についても検討した。さらに、次世代シーケンサーを用いた微生物菌叢解析も加えて実施した。底質中の16SrRNA遺伝子の次世代シーケンサー解析の結果、微生物群集は生物単一種よりも複数種を組み合わせることによって、独自の菌叢へとより変化していることが明らかとなった。得られた成果は、第45回UJNR水産増養殖専門部会シンポジウムにて発表を行い、アメリカ国立海洋気象局(NOAA)らの研究者と広く情報交換を行った。さらに、FMラジオ等で研究を紹介するなど、一般市民に向けて広く情報を配信した。
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