研究課題
本研究ではPPARδアゴニスト活性を有する農業系副産物(食用にされない葉や花などの廃棄部位)給与によってブタの肉質の向上が可能か、細胞実験とモデル動物で検討した後、最終的にブタを用いて検証することを目的とする。PPARδ活性化は遅筋タイプ筋線維の増加を誘導することが知られ、遅筋タイプが多い食肉は優れた栄養特性、理化学的特性、食味性を有すると言われる。従って、PPARδアゴニスト活性を有する農業系副産物をブタに与えれば、骨格筋の遅筋タイプが増加し、食肉の栄養特性と食味性を改善することができると着想した。平成26年度は高PPARδアゴニスト活性素材の探索を中心に検討を行い、結果、ヤマブシタケ人工栽培後の廃菌床、ユキレイタケ人工栽培後の廃菌床、ミカン柱頭、ミカン花弁、トマト葉の各エタノール抽出物にPPARδアゴニスト活性が見出だされた。次に、材料の入手が容易であったユキレイタケ菌床に着目し、検討を進めた。ユキレイタケ菌床5%添加食を24時間与えたマウス長趾伸筋では、PPARδ標的遺伝子であるPDK4およびUCP3のmRNA発現量が有意に増加した。ユキレイタケ菌床1%もしくは10%添加食を24時間与えたブタ胸最長筋においては、PDK4およびUCP3の増加傾向が見られた。これらの結果からマウスおよびブタでは、ユキレイタケ菌床の摂取は骨格筋のPPARδを活性化させることが示唆された。以上の結果から、ユキレイタケ菌床を家畜飼料に添加すれば骨格筋のPPARδを活性化でき、遅筋タイプを増加させることが期待される。
2: おおむね順調に進展している
PPARδアゴニスト活性を有する農業系副産物のスクリーニングの結果、キノコの一種ユキレイタケおよびその廃菌床から高い活性を見いだすことに成功をしたから。
今後の研究方針として、マウスあるいはブタ生体でユキレイタケ菌床長期摂取が筋線維タイプおよび肉質に変化を与えるか検討を行っていく。具体的には長期摂取させたマウスおよびブタから採取した様々な筋組織において遅筋タイプの筋線維が増加したかどうか、 筋線維タイプマーカーのミオシン重鎖(MyHC)組成を、申請者が開発した特殊なSDS-PAGE法を用いて評価する。さらに抗MyHC特異抗体を用いた筋切片の免疫蛍光染色の解析から裏付けをとる。また酸化的代謝に関わる酵素やミトコンドリアマーカーのmRNA発現量をリアルタイムPCRで、タンパク質発現量をWestern blottingで解析し、遅筋タイプの増加に対応して、脂肪酸酸化に関連する遺伝子発現が増加したか確認する。飼育終了後の各筋組織の剪断力価をレオメーターで、加熱損失(保水性の指標)を加熱後の重量変化から測定する。マウスでも大腿四頭筋を用いれば剪断力価と加熱損失が精度良く測定できることを既に確認している。飼育終了後の各筋組織の一般成分分析を受託解析で行い、HPLC法でタウリン、カルニチン、遊離アミノ酸、呈味性核酸量を定量し、栄養機能成分や呈味性化合物量が増加するか確認する。
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