研究課題
本研究ではPPARδアゴニスト活性を有する農業系副産物(食用にされない葉や花などの廃棄部位)給与によってブタの肉質の向上が可能か、細胞実験とモデル動物で検討した後、最終的にブタを用いて検証することを目的とする。PPARδ活性化は遅筋タイプ筋線維の増加を誘導することが知られ、遅筋タイプが多い食肉は優れた栄養特性、理化学的特性、食味性を有すると言われる。従って、PPARδアゴニスト活性を有する農業系副産物をブタに与えれば、骨格筋の遅筋タイプが増加し、食肉の栄養特性と食味性を改善することができると着想した。平成27年度は高PPARδアゴニスト活性素材候補であるユキレイタケおよびその人工栽培菌床に着目し、検討を進めた。まずはユキレイタケ菌床のマウスにおける長期投与試験を実施した。5%ユキレイタケ菌床添加食を8週間マウスに与え、骨格筋の筋線維タイプに関わる因子の解析を実施した。しかしながら、5%ユキレイタケ菌床添加食によって、マウスの筋線維タイプに関わる因子に有意な変化は見られなかった。この素材には至適な投与量があると予測し、マウスを用いて、極低濃度から高濃度までのユキレイタケ菌床配合食の24時間自由摂食後、および種々の濃度の菌床エタノール抽出物を、経口投与6時間後に長趾伸筋を摘出し、PPARδ標的遺伝子であるPDK4, UCP3, ANGPTL4のmRNA発現量の増加を調べた。その結果、発現量の増加ピークは特定の濃度で観察されたが、高濃度ではこれら遺伝子の発現増加は抑制されることが分かった。今後は活性成分の抽出と同定を行い、精製化合物投与による影響を検討予定でいる。
2: おおむね順調に進展している
PPARδアゴニスト活性を有する農業系副産物であるユキレイタケ菌床の解析がかなり進展したため。
今後の研究方針として、まずユキレイタケに含まれるPPARδアゴニスト活性成分の同定を進める。その方法として、抽出物を各種クロマトグラフィーにかけ、得られた画分を、培養細胞系(レポーターアッセイ)で明らかにしていく。その後、同定された活性成分を精製し、マウスへの投与後、PPARδ標的遺伝子であるPDK4, UCP3, ANGPTL4のmRNA発現量の増加が生じるか調べ、長期投与試験に移行していく。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件)
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