研究課題
本研究ではPPARδアゴニスト活性を有する農業系副産物(食用にされない葉や花などの廃棄部位)給与によってブタの肉質の向上が可能か、細胞実験とモデル動物で検討した後、最終的にブタを用いて検証することを目的とする。PPARδ活性化は遅筋タイプ筋線維の増加を誘導することが知られ、遅筋タイプが多い食肉は優れた栄養特性、理化学的特性、食味性を有すると言われる。従って、PPARδアゴニスト活性を有する農業系副産物をブタに与えれば、骨格筋の遅筋タイプが増加し、食肉の栄養特性と食味性を改善することができると着想した。平成28年度は高PPARδアゴニスト活性素材候補であるユキレイタケおよびその人工栽培菌床に着目し、さらに検討を進めた。まず分画物のPPARδアゴニスト活性を効率的に測定するために、PPAR応答配列の下流にルシフェラーゼ遺伝子が発現する組換えプラスミドをC2C12筋芽細胞に導入し、ルシフェラーゼの発光強度から活性を測定できる系を確立した。さらに7~8週齢の雄性C57BL/6Jマウスにユキレイタケおよびその人工栽培菌床のエタノール抽出物を40~1000 mg/kg体重の範囲で腹腔内投与あるいは経口投与を行い、6時間後に長趾伸筋およびヒラメ筋を摘出し、PPARδ標的遺伝子(PDK4、UCP3、Angptl4)の発現量を調べた。抽出物の腹腔内投与においてはPPARδ標的遺伝子の発現増加が見られたが、経口投与においてはその増加は見られなかった。以上より、ユキレイタケの子実体および菌床にはPPARδ活性化成分が存在し、その成分は生体内でも作用するが、生物が消化・吸収を行う過程で構造が変化し、活性が低下するということが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
農業系副産物であるユキレイタケの子実体および菌床のPPARδアゴニスト活性を確認できたとともに、その活性が投与経路で異なる事を見出したため。
今後の研究方針として、まずユキレイタケ子実体と菌床に含まれるPPARδアゴニスト活性成分の同定を進める。その方法として、抽出物を各種クロマトグラフィーにかけ、得られた画分を、培養細胞系(レポーターアッセイ)で明らかにしていく。その後、同定された活性成分を精製し、マウスへの投与後、PPARδ標的遺伝子であるPDK4, UCP3, ANGPTL4のmRNA発現量の増加が生じるか調べる。精製活性成分をブタに単回で与え、筋組織で上記遺伝子発現が上昇するか調べる。
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