研究課題
本研究ではPPARδアゴニスト活性を有する農業系副産物(食用にされない葉や花などの廃棄部位)給与によってブタの肉質の向上が可能か、細胞実験とモデル動物で検討した後、最終的にブタを用いて検証することを目的とする。PPARδ活性化は遅筋タイプ筋線維の増加を誘導することが知られ、遅筋タイプが多い食肉は優れた栄養特性、理化学的特性、食味性を有すると言われる。従って、PPARδアゴニスト活性を有する農業系副産物をブタに与えれば、骨格筋の遅筋タイプが増加し、食肉の栄養特性と食味性を改善することができると着想した。平成28年度までの検討でユキレイタケの子実体および菌床にはPPARδ活性化成分が存在するが、消化・吸収過程で失活することが分かった。そこで平成29年度は別の別の候補素材を集め、凍結乾燥まで行った。一方、運動はPPARδの活性化を誘導し、遅筋タイプ筋線維の増加を誘導する事が分かっているため、運動(放牧飼育)がブタの遅筋タイプの増加と肉質の変化を生じさせるか検討を行った。大ヨークシャー種の豚を放牧区と安静区に分け、放牧区は出荷前の32日間、毎日6時間の放牧飼育を行った。心拍数から算出した運動強度は安静区で約35%HRmax、運動区の放牧中は約50%HRmaxで、放牧は低強度の持久的な運動に相当すると考えられた。運動区の胸最長筋では遅筋タイプのMyHC1が有意に増加し、速筋タイプのMyHC2(2A+2X)が有意に減少した。運動区の胸最長筋で肉組織の遠心保水性が増加傾向を示した。また運動区の胸最長筋で加熱後の剪断力価が有意に増加した。官能試験の結果、放牧区のロース肉では「肉の味の強さ」「口の中の香り」の項目で有意な高値を示した。以上より、ブタで低強度の運動を出荷前に1か月間負荷すると遅筋タイプの筋線維割合が増加し、硬さが増すものの、保水性や食味性が向上することが示唆された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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