研究課題/領域番号 |
26712024
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
山田 健太郎 大分大学, 医学部, 助教 (70458280)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 狂犬病ウイルス / 増殖性 / 弱毒化 / N型糖鎖 / 膜蛋白質 / 相互作用 / in vivo イメージング |
研究実績の概要 |
本研究は、狂犬病ウイルス街上毒株においてG蛋白質へのN型糖鎖追加が規定する増殖性亢進機構と弱毒化機構について、それに関わる宿主分子を明らかにし、さらにその分子が狂犬病の治療法・治療薬の標的となり得るかについて検証することを試みるものである。 増殖性亢進機構解明に向けては、昨年度に酵母膜蛋白質ツーハイブリット法によりスクリーニングした狂犬病ウイルス街上毒1088株G蛋白質(野生型)と相互作用する22種類の宿主分子について、哺乳類細胞での相互作用を再確認し、さらにN型糖鎖追加型G蛋白質とは相互作用しない宿主分子を特定するために、今年度は既報を基にスプリットルシフェラーゼを利用した膜蛋白質相互作用検出系の確立を試みたが、構築した系についてG蛋白質との相互作用が確認されているウイルスM蛋白質を陽性コントロールとして検証したところ、相互作用を検出することができず、別の検出系に変更する必要があることが分かった。 弱毒化機構解明に向けては、マルチモーダルin vivoイメージング解析と網羅的発現解析(RNA-Seq)を併用することにより目的を達成することを計画しており、今年度は、昨年度に構築したウイルスゲノムプラスミドを用いて長波長赤色蛍光蛋白質(E2-Crimson)発現組換え1088株(1088/E2Cr)を作出し、それがin vivoイメージング解析に資するかどうか検証を行った。作出した1088/E2Crは感染細胞において、E2Cr由来の蛍光を発することが確認された。1088/E2Crをヘアレスマウスに脳内接種し、in vivoイメージング装置(Lumazone)にて経日的に蛍光シグナルの検出を行ったところ、臨床症状(体重減少)が確認できた日より頭部において明瞭な蛍光シグナルが確認されたが、潜伏期間中のウイルス動態を観察するためにはより高感度な方法を確立する必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
増殖性亢進機構解明に向けては、哺乳類細胞での相互作用検出系を確立できず、当初の計画通りに野生型G蛋白質とは相互作用するが、N型糖鎖追加型G蛋白質とは相互作用しない宿主分子を特定することができなかった。これについては、解析方法の選択が適切でなかったものと考えている。 弱毒化機構解明に向けては、マルチモーダルin vivoイメージング解析を行うため、すなわち宿主免疫反応については発光での、ウイルス動態については蛍光での観察を可能とするために、E2-Crimson発現組換え1088株を作出し、自家蛍光の影響が小さいヘアレスマウスを用いたが、潜伏期間中のウイルス動態を検出することはできず、改善の必要があることが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
増殖性亢進機構解明に向けては、酵母膜蛋白質ツーハイブリット法と同じストラテジーで、すなわち最近報告された(Petschniggら、Nat. Methods、2014)スプリットユビキチンと転写因子を組み合わせた方法にて、目的の宿主分子の特定を試みる。特定できた場合には、さらにノックダウン実験等によりその妥当性について検証を行う。 弱毒化機構解明に向けては、より高感度なin vivo蛍光イメージング法を確立するため、レポーター遺伝子として、より長く生体透過性の高い蛍光波長を発する光合成細菌フィトクローム由来近赤外蛍光蛋白質(iRFP)等について検討を行う。すでにそのためのウイルスゲノムプラスミドは構築済みであるため、次年度において速やかにその組換えウイルスの回収を行い、有用性について比較検証を行う。また、波長のピークが600 nm以上であるルシフェラーゼ(Red Firefly Luciferase)を発現する組換えウイルスも作出することも計画している。宿主免疫反応検出用試薬による発光の波長のピークが425 nmであることから、フィルターによるシグナルの区別が可能になることを期待している。これもすでにウイルスゲノムプラスミドが構築済みであり、次年度において速やかにその組換えウイルスの回収を行い、有用性について検証する。in vivoイメージング解析系が確立できれば、N型糖鎖追加による弱毒株が炎症反応を惹起する部位・組織を特定し、そのトリガーとなる宿主分子(遺伝子)をRNA-Seq等により明らかにする計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度中に、ヘアレスマウスを用いたin vivoイメージング解析をもう少し進める予定であったが、動物実験計画書の承認を得るのに想定より時間を要したため、予定してしていた動物実験が行えず、助成金分において次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については、翌年度請求分の研究費と併せて、動物実験用の費用(ヘアレスマウス、クロロフィルフリーのマウス用エサ、マウス個体識別用入墨器等)に充てる予定で、H28年度のできる限り早い時期での使用を予定している。
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